DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がThe insightful Investorの配信動画で、長期的な金利動向と戦争の関係について語っている。
低金利の時代の終わり
債券の専門家であるガンドラック氏が今回のインタビューで語っているのは金利の長期的な動きについてである。ガンドラック氏は次のように語っている。
数年前まで政策金利はゼロで、10年物国債の金利は1.5%、投資家は利回りを求めてリスク資産に群がっていた。
だがコロナ後に行われた現金給付によって物価が高騰し、それを抑えるために金利は上昇した。
アメリカの長期金利は次のように推移している。

そして金利は、ガンドラック氏の予想では、低下し続けたこれまで40年の状況にはもう戻らない。
金利は底を打っており、長期の金利上昇サイクルに入っているというのがわたしの考えだ。
利払いが防衛費を圧迫する
ここの読者には周知の話題だが、問題は、これまで積み上がってきた莫大な政府債務に利払いが発生しているということである。
これまではどれだけ債務を積み上げても金利はほとんどゼロだったのだが、金利が上がった今では政府債務は大きな問題となっている。
何故ならば、国債の利払い費用が政府の他の支出を圧迫し始めているからである。
ガンドラック氏は次のように語っている。
この国債の利払いの問題がどうなるかを考えなければならない。今や国債の利払いは防衛費よりも高くなっている。
NATOや地政学的な状況全般について見てみると良い。今日のニュースで見たのは、フランスとイギリスがウクライナを防衛するとしても、イタリアは参加しないということだ。興味深いことではないか。
国が豊かである間は、先進国同士が喧嘩をしない状況が続いていた。アメリカを中心とした先進国が中東やベトナムや朝鮮半島で無茶苦茶なことをやろうと、先進国に大きな反対はなかった。
しかし先進国の財政が逼迫してくると、戦争をやりたいグループと戦争をやりたくないグループに分裂し始める。今ではアメリカやイタリアがウクライナと距離を置き始め、イギリスとフランスは前のめりである。
だが分裂した欧米諸国を見て、これまで好き勝手にされていた国々が反撃し始める。それがタリバンのアフガニスタン奪還であり、ロシアのウクライナ侵攻である。
良いか悪いかではない。財政がそのように傾くと、地政学的状況もそのようになるということである。
そしてガンドラック氏は次のように予想している。
こうした状況は多くの場合、内戦や世界大戦のような大きな争いに繋がる。人類は80年ほどの周期でそれを繰り返す。
結論
さて、ここの読者ならばこれは何処かで聞いた話だと思ったのではないか。金利のサイクルが覇権国家の覇権に影響し、それが戦争と平和のサイクルを作り出す。レイ・ダリオ氏の『世界秩序の変化に対処するための原則』で詳しく説明されている国家の繁栄と衰退のサイクルである。
優れたヘッジファンドマネージャーたちの意見は、長期的には一致している。ガンドラック氏は次のように述べている。
多くの人が異なる表現の仕方で同じことについて語っている。

世界秩序の変化に対処するための原則