DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで、Fed(連邦準備制度)の3月のFOMC会合に対してコメントしている。
3月FOMC会合結果
3月19日、アメリカの中央銀行であるFedは金融会合決定であるFOMC会合の結果を発表し、政策金利の維持を決定した。昨年9月から合計1%の利下げを行なった後、利下げの停止が続いている。
また、同時に発表されたドットプロットでは年内に2回の利下げ見通しが維持され、一方でインフレ予想は上方修正されている。
パウエル議長は記者会見で「不確実性」ということを強調していた。ガンドラック氏は今回のFOMC会合について次のようにコメントしている。
パウエル氏の言ったことの中で市場に好感されたのは、金融引き締めを急がないと言ったことだろう。
アメリカのインフレ率は、利下げを始めた時にパウエル氏が思っていたほど下がらなかった。アメリカのインフレ率は2%台後半で推移している。

だからパウエル議長はもう少し様子を見たいのだろう。
Fedの利下げ見通し維持
しかし今回の会合では、パウエル氏のそうした分析とは合致しない部分がある。ガンドラック氏は次のように述べている。
ドットプロットでは2回の利下げ見通しが維持された。
だがそれは奇妙な話だ。ジャーナリストたちから疑問の声が上がり、インフレ予想を上ブレさせたのに利下げ予想を残したのはどういうことだと問われた。
まったく良い質問だ。パウエル議長は押されていたように見えた。
だが金融市場は2回の利下げ見通しが維持されたことを明らかに好感した。
Fedは表向きは様子見の姿勢を示しながら、何故今年の利下げ予想だけは維持したのか。
ガンドラック氏は次のように述べている。
理由は明らかだ。2年物国債の金利は現在4%をやや下回る水準で、1、2回の利下げと整合している。
Fedの今後の利下げ予想を織り込んで推移する2年物米国債の金利は、現在の政策金利が4.25%であるのに対し、次のように3%台で推移している。

要するに、金融市場が利下げを織り込んでいるから利下げ見通しを維持したのである。
利下げにもかかわらず下がる市場
結局、パウエル議長は「本当は利下げ見通しを撤回すべきだが市場を荒れさせたくないので撤回しない」という状況に追い込まれている。
それはFedが利下げフェイズに入ったにもかかわらず、株式も債券も上がっていないという異常事態が、パウエル氏の危機感に繋がっているのである。
ガンドラック氏は次のように言っている。
Fedが9月に利下げを開始してから金利はまだ上昇したままだ。そして株式市場はほとんど動いていない。
普通、利下げを折り込めば長期金利は下がるのだが、利下げが始まった9月以降、アメリカの長期金利はむしろ上がっている。

これはFedが金利をコントロールできていないことを意味している。
しかも読者も知っての通り、株式市場も上がるどころか荒れ模様である。

ガンドラック氏はこう続けている。
Fedが1%利下げし、更に2回の利下げを表明しているにもかかわらず、10年物国債の価格が下がっており、株式市場も上がっていない。
金融市場には「Fedとは戦うな」という言葉があり、Fedが利下げしている時にはリスクを取るべきだという意味だが、今はそうなっていない。
そしてそれは今後もそうなるだろう。毎回話していることだが、国債の利払いの問題があるからだ。米国債には毎日30億ドルの利払いが生じている。
コロナ後の金利上昇により米国債には多額の利払いが生じており、米国政府は国債の利払いのために新たな国債を発行しなければならない状態に陥っている。
新たに発行され市場で売られる国債が国債価格に下方圧力を与えており、利下げにもかかわらず金利が上昇する事態となっているのである。
そして金利が下がらなければ、株式市場も上がることはない。更に言えば、これまで数十年米国株が上がり続けていたのは、これまで数十年金利が下がり続けていたからである。
国債の大量発行で金利が上昇し、Fedもインフレ懸念で国債買い入れが出来ない状況となれば、米国株はどうなるか。長期見通しに関しては、米国株にはあまり不確実性がないのである。