世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、CNBCのインタビューでアメリカと中国のAIをめぐる競争について語っている。
アメリカと中国とAI
トランプ大統領の関税のおかげでアメリカと中国の経済的関係が話題となっているが、AIは特に両国の競争が激しくなっている分野である。
最近、中国のAIであるDeepSeekがChatGPTに近い性能を発揮しているとして、金融市場で話題になった。
ダリオ氏は今回、AIとその情報処理に必要な半導体チップについて次のように述べている。
米国は新たな技術を発明することに関しては飛び抜けている。特に、半導体チップの発明に関してはそうだ。
だがチップの製造に関して飛び抜けているわけではない。
これは米国株に詳しい人ならば知っていることだろうが、AIに使われるGPUの最大手メーカーであるNVIDIAは、実はGPUを生産しているわけではない。
どういうことかと言えば、NVIDIAはGPUを設計しているのであり、実際の生産は台湾のTSMCが行なっている。アメリカの物価は高く、アメリカに工場を作ってはチップの値段が大幅に上がってしまうだろう。
一方で、中国では最先端のチップを作れない上に、アメリカの輸出規制により最先端のチップは中国には流れないということになっている。
先述のDeepSeekは最先端のチップを使わずに好パフォーマンスを叩き出したか、あるいはアメリカの輸出規制を迂回して最先端のチップを手に入れたかであり、どちらにしても市場の話題となっているのである。
アメリカはチップの設計だけ
ダリオ氏はAIをめぐるアメリカと中国の状況を次のように分析している。
中国は最先端の半導体チップの発明に関して米国よりやや遅れている。だから最先端のチップを手に入れようとしている。
しかし中国はチップを製造すること、特に大量生産すること、そしてチップをまとめてソフトウェアとして動かすことに関して米国より優れている。
日本もそうだが、アメリカはこれまで工場を発展途上国に任せて自分で生産を行なってこなかった。中国を敵に回したとき、それが自分の首を締めているのである。
ダリオ氏はこれまでも、NVIDIAのような既に上がってしまった銘柄よりもこれから上がるAI銘柄に注目すべきだと主張してきた。
そのダリオ氏は今回、次のように言っている。
これから重要なのはAI技術をどう利用するかであって、最先端でもっとも高価なチップをどう作るかではない。
中国はAIを実用化することに関して米国よりも先を行っている。彼らはAIをロボットと組み合わせている。これに関して米国は中国に及ばない。
株式市場では、GPUのメーカーであるNVIDIAなど、AIの生産に直接関係する銘柄の株価はかなり上がっているが、AIが実際にどう使われるのかに基づいて株価が上がっている場面はまだほとんど見られていない。
ダリオ氏はこれまでもAIの実際の利用に着目して銘柄を探すべきだと主張していたが、ダリオ氏によればそうした銘柄は中国にあるようである。
ダリオ氏は去年、中国株が不動産バブルの底値から上昇すると予想しており、中国株は事実その通りになっている。

米国株が下落する中、ダリオ氏は中国株で儲けているはずだが、その中には中国のAI関連銘柄も含まれるのだろう。
ダリオ氏は次のように述べている。
AIに関する競争は激しくなるだろう。
ダリオ氏は著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で、アメリカは長期的には衰退し、中国が代わりに次の覇権国家となると予想している。
その競争にはAIも含まれるだろう。少なくとも、世界の流れに投資をするには、中国株を無視することがますます難しくなっているとは感じる。

世界秩序の変化に対処するための原則