引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏のBloombergによるインタビューである。
今回は為替相場やゴールド、ビットコインについて語っている部分を紹介したい。
アメリカの財政赤字
前回の記事では、ダリオ氏はアメリカの財政赤字の問題に言及していた。コロナ後の金利上昇で米国債には大量の利払いが発生しており、アメリカは国債の利払いを新規の国債発行で賄っている。
ダリオ氏はこのまま行けば、債券市場は大量に発行される米国債を消化できなくなり、米国債は下落し、中央銀行が買い支えを行わなければならなくなると予想している。
ダリオ氏はタイミングについて次のように述べている。
もし債務問題を解決しなければ、恐らく3年前後だ。
だが一方で、ダリオ氏は年内には金融市場で問題が発生すると予想している。それは3年後の本格的な危機の前触れとなるのだろうか。
ドルの暴落
米国債が暴落し金利が上昇するとき、ダリオ氏の言うように中央銀行は紙幣印刷による国債買い入れで米国債を救おうとするだろうが、その時に犠牲になるのはドルの価値である。
要するに、アメリカは米国債を見殺しにするのかドルを犠牲にして米国債を救うのかの選択に迫られるが、ダリオ氏はアメリカが米国債を選ぶと予想しているのである。
ジョニー・ヘイコック氏も同じことを予想していた。
ではドル円は下落するのか。だがダリオ氏の予想はそう単純なものではない。
ダリオ氏は次のように言っている。
ドルが他のすべての通貨に対して下落するということではないと思う。ドルと一緒に他のすべての通貨も価値を失うだろう。
具体的なことはそれぞれの中央銀行次第だ。通貨同士の競争は、最悪の通貨を競うコンテストになるだろう。
何故ならば、どの中央銀行も緩和政策を取っており、利上げが必要でも利上げしたがらないからである。
特に日本円はアベノミクス以来ドルに対して価値が半分になったが、ここから更に経済が減速し、更に緩和しなければならなくなったら、円安はどうなるのか。
ダリオ氏はドル以外の通貨について次のように述べている。
ユーロやヨーロッパの状況は酷い。日本円について言えば、日本は多額の債務を抱えており、しかもそれをマネタイズしている。
中国の人民元も安全な富の貯蔵手段にはならないだろう。
不動産バブル崩壊のまっただ中にある中国に関しては、ダリオ氏は金融緩和を推奨している。
だから結局どの通貨も価値を失うだろう。
通貨は下がり、ゴールドとビットコインが上がる
やがて紙幣ではものを買えなくなる。だからダリオ氏は次のように代わりにゴールドを推奨している。
どの通貨も強いとは言えない状況になる。1970年代や1930年代と同じだ。すべての通貨がゴールドや他の現物資産に対して下落する。
紙幣は中央銀行が自由に印刷できるが、ゴールドを印刷することはできないからである。
誰かが勝手にその資産の価値を下げられないようにするためには、誰かがその供給量を自由に変化させることができないことが必要である。
だから人々は中央銀行が自由に印刷できる紙幣の代わりに、ゴールドを買っている。それで金価格が上がっている。

ダリオ氏は次のように述べている。
紙幣の代わりになるものが何かということが問題だ。紙幣の代わりになるためには、供給が限られていることが必要だ。
ビットコインはそうしたものの1つかもしれない。もしかしたら主役の1つかもしれない。
コロナ後の現金給付によってインフレが発生して以来、紙幣の価値ということが話題になり続けている。