ヘイコック氏: 株式は売り時、株式からゴールドへの資産逃避が始まる

Von Greyerzのパートナーであるジョニー・ヘイコック氏が自社配信動画で金相場と株式について語っている。

アメリカの債務危機

2025年に入って著名投資家は誰もが語っていることが2つある。米国債の危機と、そしてゴールドである。

何故か。アメリカの財政赤字が膨張しているからである。コロナ後の金利上昇で米国債には多額の利払いが発生しており、それはGDPの4%に達しつつある。

米国政府はこの国債の利払いを新たな国債を売ることで賄っているが、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が言うように、市場が吸収できる米国債の量には限界がある。

ダリオ氏は最終的に、中央銀行がインフレにもかかわらず紙幣印刷をして米国債を救済しなければならないと予想している。

1970年代の物価高騰

インフレにもかかわらず、中央銀行が緩和に踏み切ればどうなるか。それは1970年代の状況である。

アメリカでは1970年代、緩和のやり過ぎでインフレが発生し、それは1980年にポール・ボルカー議長が大幅な引き締め政策をやるまで続いた。

物価は15年ほどで3倍になった。つまり紙幣の価値は3分の1になった。

このインフレの時代、投資家はどうすれば資産を守れたのか。ヘイコック氏は次のように述べている。

1970年代には金価格は35ドルから850ドルに上がった。

インフレと紙幣の価値暴落で真っ先に買われるのはゴールドである。一方で、特に日本ではインフレで預金から株式に逃げようとしている人が多いが、1970年代の物価高騰時代には、米国株のパフォーマンスはゴールドどころか預金のパフォーマンスさえ大きく下回った。

以下の記事でダリオ氏が詳しく解説している。

インフレ時代の資産運用

株式はデフレの時代の資産である。米国株は過去何十年も上がり続けたと人は言うが、それはデフレの時代だったからである。金利の低下が株価を長期的な上げ相場へと持っていった。

だが上で説明した通り、金利が上がるインフレの時代には資産価格はまったく違う動き方をする。だからヘイコック氏は次のように言っている。

去年は株式からゴールドに移行する最高のタイミングだった。

1年ほど前は、ゴールドに改宗した人々だけがゴールドの上げ相場を楽しむのではなく、他の人々もゴールドという資産クラスとその恩恵について知り始めるのに完璧なタイミングだった。

デフレの時代は終わった。だから人々はデフレの時代の常識(例えば株価の長期的上昇)で投資をするのではなく、インフレの時代の常識(例えば株価は預金のパフォーマンスにさえ勝てない)で投資をするべきなのである。

ゴールドは株式よりも良い

だが、実際にはデフレの時代でさえもゴールドは株式に勝っているのである。ヘイコック氏は次のように言っている。

多くの人が気付いていないことだが、今世紀に入ってからのゴールドのパフォーマンスは、既にS&P 500を凌いでいる。S&P 500が上げ相場であるにもかかわらずだ。

これに気付いている人がどれだけ居るだろうか。2000年から現在までのパフォーマンスは、S&P 500が4倍になっているのに対し、ゴールドは10倍に上がっている。

だが話はそれだけではない。ヘイコック氏が「既に」と言っているのは、ヘイコック氏がゴールドの上げ相場はむしろここからだと予想しているからだ。

だからヘイコック氏は、ゴールドは疑問の余地なく株式よりも優れた資産クラスだと主張している。

だがこの事実に気付いている人は少ない。何故だろうか。ヘイコック氏は次のように続けている。

配当を再投資した場合においてもゴールドは今世紀、S&P 500を上回っているという事実に、人々はまだ気付いていない。気付く必要がなかったからだ。

人々がこれまでそのことを考えなくても良かった理由は、紙幣印刷があらゆる資産クラスをバブルにしたからだ。

インフレ相場における株式とゴールド

重要なのは、ヘイコック氏が「気付く必要がなかった」と言っていることだ。投資家が、自分の持っている資産がまずいのではないかと「気付く必要がある」瞬間とはどのような時だろうか。

それはその資産が下落する時である。そしてもしインフレが止まらなければ、ダリオ氏が分析したように、株式のパフォーマンスはインフレ相場における株式のパフォーマンスに変化する。

つまり、株式のパフォーマンスはゴールドどころか預金にも勝てないということである。

だからヘイコック氏は次のように言っている。

だが人々が考え直しを迫られる時が来る。

あらゆる徴候が既に出ている。そして市場はきしみ始めている。だがメインストリームの人々は身を守るためものを持っていない。

それはゴールドだ。

1970年代の価格上昇については以下の記事で纏めているので、そちらも参考にしてもらいたい。