引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のトニー・ロビンズ氏によるインタビューである。
今回はアメリカの債務問題がどのように解決されるかについて語っている部分を紹介したい。
政府効率化省
アメリカの債務問題は、ここの読者には周知の事実である。コロナ後の金利上昇によって大量の米国債に多額の利払いが発生しているが、米国政府はそれを新たな借金によって賄っている。
トランプ政権は一応この問題を認識しており、財務長官に任命された元Soros Fund Managementのスコット・ベッセント氏は、財政赤字をGDPの3%まで下げることを目標としている。
実際に赤字を削減しようとしているのは、イーロン・マスク氏の率いるDOGE(政府効率化省)である。
DOGEは就任早々からSDGs系の補助金を凍結したり、政府職員を大量解雇したりして支出を減らそうとしている。
だがガンドラック氏はDOGEについて次のように述べている。
DOGEは、ある程度の赤字を減らせるかもしれないが、十分な金額になるとは思えない。米国債が再編される可能性のほうが高いと思う。
財政赤字の一番の問題
再編とは借金が払えないので債務を一部帳消しにしてもらおうということであり、つまりほとんどデフォルトである。前回の記事でガンドラック氏はアメリカは近い内にそこまで行くと予想していた。
なぜガンドラック氏はそう予想するのか。ガンドラック氏は次のように理由を述べている。
一番の問題は、借金以外の支払い義務が220兆ドルもあることだ。GDPの6.5倍ほどに相当する。
今の税制と債務状況でこれを支払うのは無理だ。
借金以外の支払い義務とは、例えば年金のことである。ガンドラック氏は次のように続けている。
一番単純な解決策はこれらの支払いを再編することだ。
つまりアメリカの年金もやはりデフォルトするらしい。
年金の再編方法
年金はどのように再編されるのか。ガンドラック氏の注目するのは年金の支払い開始時期である。
ガンドラック氏は次のように説明する。
年金の支払い開始年齢が65歳に設定されたとき、平均寿命は65歳よりも低かった。
だが平均寿命はそれから80歳近くまで上がった。
平均寿命が63歳の時に支払い開始を65歳にしたのに、平均寿命が79歳の今、65歳から支払い開始にするのは理屈に合わない。
だからこの解決策が可能になるように動き始めるべきだ。
つまりガンドラック氏は年金の支払い開始年齢を大幅に遅らせるべきだと考えているのである。
結論
スタンレー・ドラッケンミラー氏もそうだが、高齢者に分類されるヘッジファンドマネージャーは政治的に高齢者に厳しい傾向がある。ドラッケンミラー氏も若者から老人に資金を移転する年金という制度を批判していた。
自分が若者から搾取することなど考えられないのだろう。
トランプ政権は今のところ、年金に手を付けないと表明している。だがガンドラック氏によれば、アメリカの財政はそんな贅沢を言っていられないところまで行く。
そのタイムスパンはどれくらいだろうか。ガンドラック氏は次のように予想している。
3年から5年だろうとは思う。5年も現状を維持できる可能性は低いが。
そうして国家の財政は徐々に窮地に陥り、老人と若者、政府と国民はどんどん相争うようになってゆく。
それはレイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想したディストピアである。だがそれは急速に現実に近づいている。
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世界秩序の変化に対処するための原則