レイ・ダリオ氏: 戦争悪化による金価格高騰に備えてゴールドを買え

引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の、Moonshots with Peter Diamondisによるインタビューである。

今回は戦争とゴールドについて語っている部分を紹介したい。

国家の繁栄と衰退のサイクル

前回の記事では、ダリオ氏は超長期のサイクルの中で株式を買うべきタイミングはいつかということを語っていた。

超長期のサイクルとは、ダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で解説している国家の繁栄と衰退のサイクルである。

今のアメリカのサイクルは、1945年に始まった。第2次世界大戦で覇権国家となったアメリカは、その前に覇権国家だった大英帝国に代わり、新たなサイクルを開始することになる。

サイクルの最初には、誰も株式や国債を買おうとはしなかった。アメリカの株式市場は1929年の世界恐慌による大暴落を経験してからそれほど経っておらず、当時の一般人は誰も株式に近寄らなかった。

だがそれこそが買いのタイミングだった。米国株はそこから上がっていった。そしてダリオ氏によれば、アメリカの覇権の衰退とともに米国株のサイクルも終わりつつある。

サイクルの終わりには、前回の大英帝国のサイクルの終わりに起こった世界恐慌のような、悲惨な状況が待っている。それが前回の記事の話である。

長期サイクルにおける金相場

世界秩序の変化に対処するための原則』に書かれたダリオ氏の長期サイクルは有名だが、ではこのサイクルの中でゴールドを買うべき時はいつなのだろうか。

前回の記事では、ダリオ氏はサイクルの終わりには戦争が起きることが多いと話していた。国力の低下にともなって社会が混乱し、そこには株式市場の下落も含まれているだろうが、戦争が起きる。

それがサイクル初期にこそ株式を買うべき理由だったが、ゴールドはどうなのか。ダリオ氏は次のように言っている。

戦争の時代には中央銀行がゴールドを買う。敵味方の両方がそうなる。

戦争の時期に政府がやることは、紙幣印刷と国債の発行だ。敵同士は互いの国債を保有したがらないし、そもそも誰も国債を保有したがらない。

それが人々がゴールドを持ちたがる理由だ。国々は互いを信用しない。

金価格の上昇

ダリオ氏は、戦争の時代にはゴールドが上がると言っている。

金価格は確かに、これまでの常識を超えて上昇している。コロナ前までは金価格の変動はインフレや金利の変化で説明が出来たが、コロナ後の金価格はそれだけでは説明できないほどに上がっている。

ジョニー・ヘイコック氏は、その理由として各国の中央銀行がゴールドを買っていることを挙げていた。

だがそれは、裏を返せばウクライナやパレスチナなど、世界情勢がきな臭くなってきたからであり、更に言えば戦争が更に悪化すればゴールドへの上昇圧力は更に高まるということになる。

それが今の状況である。『世界秩序の変化に対処するための原則』で説明されているサイクル終盤では、株式よりゴールドを持つべき時なのである。

サイクルは回る。筆者の予想では、恐らく20年以内に1929年のような状況が来て、すべてがひっくり返り、ゴールドを売ってでも株式を買いたいような状況になるだろう。だが今株式を買っている人のうち、どれだけがその時にもまだ株式市場に残っているだろうか。


世界秩序の変化に対処するための原則