DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで、今年のアメリカの金利動向とトランプ政権の経済政策について語っている。
今年の米国利下げ
1月29日、FedはFOMC会合で政策金利の据え置きを決定した。去年の9月に利下げを開始して以来、初の利下げ停止である。
インフレ率がどうも2%へは下がって来ないようなので、パウエル議長は様子見せざるを得なくなったのである。アメリカのインフレ率は以下のように推移している。
インフレ率に関するガンドラック氏の予想については以下の記事で報じておいた。
ガンドラック氏はアメリカのインフレが再燃する可能性を懸念している。だから2025年の利下げについて、次のように予想する。
最大でも2回だ。
メインシナリオは1回だろう。
上昇する長期金利
利下げの余地が限られていることは、株式市場にとってはマイナスである。だが株価に影響を及ぼすのは政策金利よりも10年物国債の金利、つまり長期金利である。
そしてこの長期金利こそが問題なのである。ガンドラック氏は次のように論じている。
パウエル議長は金利を1%下げたと言った。興味深いことに、政策金利について言えばそれは正しいのだが、長期金利は利下げ開始から0.8%上昇している。
財政赤字の問題が長期金利の上昇の主因となっている。長期金利は利下げにもかかわらず上昇しており、過去の利下げではこのようなことはなかった。
普通ならFedが利下げを開始すれば国債の金利は下がるはずだが、今回はそうならないどころか金利は上がっている。
アメリカの長期金利は次のように推移している。利下げ開始は9月である。
ガンドラック氏によれば、利下げにもかかわらず国債の金利が上がっているのは、財政赤字による米国債の大量発行で、国債の買い手が不足しているせいだという。
そしてこれまでは金利上昇に耐えている株式市場だが、2025年に金利が上がり続けると、流石に株価に影響が出ると予想する機関投資家は多い。
だがガンドラック氏は長期金利に対して無慈悲な予想を立てている。
長期の金利はまだ天井には達していないと思う。まだ上昇する余地がある。
金利上昇の理由
何故か。コロナ以後、金利上昇の理由はインフレと国債の大量発行による国債の価格下落であり、その両方が要するに財政赤字に起因している。
バイデン政権がコロナ禍が終わった後も巨額の財政赤字を続けてきたからである。
だからトランプ政権が財政赤字をどうするのかということが注目されている。だがインフレと国債の大量発行の両方について、ガンドラック氏は次のように悲観的な見方を示している。
インフレはそう簡単には2%には戻らない。
トランプ政権で財政赤字の問題が改善するとは考えていない。
トランプ政権と財政赤字
財務長官に指名された、元Soros Fund Managementのスコット・ベッセント氏は財政赤字を半減させる目標を打ち立てている。
だがガンドラック氏はその目標が達成されるとは考えていない。ガンドラック氏は次のように述べている。
政府効率化省とやらが5,000万ドルや600万ドルの無駄削減をいくつか見つけても、減税や、戦争や災害への支出を考えれば、トランプ政権で財政赤字は減らないだろう。
イーロン・マスク氏がトップに就任した政府効率化省(DOGE)は、既に様々な政府支出をストップしているが、ガンドラック氏は支出を減らした分をトランプ大統領が減税などで使い切ってしまうと考えているようである。
それはアメリカ経済にとっては短期的にプラスなのだが、今年は米国債大量発行の問題がある。
それが前回のトランプ政権の時とは違う点である。米国債の大量発行が続けば長期金利が上昇し、株価や実体経済に亀裂が入り始めるとガンドラック氏は予想している。
ガンドラック氏は次のように言っている。
そして利下げを一時停止しているFedに問題が生じる。
結局、トランプ政権は財政赤字を増やし続けることになるのか。それはレイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で研究した、インフレと国債下落で覇権国家が衰退してゆく長期シナリオである。
世界秩序の変化に対処するための原則