DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が、自社の毎年恒例の円卓会議でAIとエネルギーについて語っている。
2025年と原子力エネルギー
これまでの記事では、円卓会議におけるガンドラック氏の米国債に関する発言を主に報じてきた。
今回はもっと個別の銘柄に関する投資の話である。
2025年に有望な投資は何か。この話題について円卓会議で原子力の話を最初に挙げたのは、FOXの司会者のチャールズ・ペイン氏である。
ペイン氏は次のように述べている。
原子力の話は本物だ。何らかの形では投資をしておかなければならない。
福島の原発事故のあと何年も嫌われていた原子力発電は、コロナ後に急に息を吹き返した。
要因はいくつかある。ロシアのウクライナ侵攻で、ヨーロッパはロシアのエネルギー資源に依存することの地政学的リスクに気がついた。
ロシアの天然ガスを避けたければ、アメリカからの輸入を増やすか、あるいは原子力しかない。原発に感情的な嫌悪感を示して脱原発したドイツ人だけは、もう戻れないのだが。
また、トランプ氏の勝利でどうなるか分からないが、脱炭素を進めるなら火力発電以外の電力が要る。それも原子力への回帰が考えられている理由である。
そして最後にAIである。AIは暗号通貨と同様に大量の電力を必要とする。
AIと原子力発電
ペイン氏は次のように言っている。
原子力全般に投資したければConstellation Energyもいい。特に下落の後では。
Constellation Energyは、ここの読者なら知っているだろうが、スリーマイル島の原子力発電所を保有する電力会社である。
Constellation Energyはスリーマイル島の原発を再稼働し、MicrosoftがAIの計算に使用するための電力を供給する契約を結んで話題になった。
その意味でConstellation EnergyはAI銘柄であり、DeepSeekショックによってNVIDIAなどと同様に株価が下落している。
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DeepSeekショックについては以下の記事で解説している。
小型モジュール炉
原発銘柄の他には、ペイン氏は次の銘柄を奨めている。
もっと個別のシナリオに賭けたいならSMR(小型モジュール炉)について調べてみると良い。
SMRは、従来の原子炉よりも小型の原子炉である。送電が難しい地域でも発電できるが、安全性や核物質の規制などの問題が障害となる。
極論すれば原子力潜水艦などは潜水艦内で発電しているわけだから、そういうことも技術的には可能なわけだ。どれだけ規制が許すかという政治の問題ではあるが、AIや安全保障の面で原子力の利用が進むなら、恩恵を受ける銘柄はあるだろう。
原子力発電とウラン
さて、これらの話に対して反応したのがガンドラック氏である。ガンドラック氏は次のように述べている。
原子力関連の銘柄の話はとても好きだ。
AIのデータセンターやAIそのものに未来があると信じるなら、大量のエネルギーが必要となる。そんなエネルギーは何処にもない。そのエネルギー需要を満たせるとすれば、原子力だけだ。
これに関しては中国のAI、DeepSeekの話は追い風だろう。以下の記事でも書いたが、アメリカでも中国でもAIの開発が盛んになれば、それだけ世界的なエネルギー需要が増えることになる。
そしてそうなれば重要になってくるのが、原子力発電の燃料になるウランである。ガンドラック氏は次のように述べている。
ついでに言うならば、それに極めて関連しているわけではないが、ウランの生産にポートフォリオの5%ほどを投資するのは面白いだろう。
ウラン価格は、2011年の福島の原発事故以降ずっと下落していたが、最近の原子力発電の見直しで高騰、そこから一時下落している。
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今のウラン価格は、福島の原発事故前とほぼ同じくらいである。
ガンドラック氏の言うように、AIと直結しているConstellation Energyとは違い、ウランは原子力発電全般の需要に左右される。原子力発電はAIだけがテーマではないからである。
どちらに賭けたいかは好みだろう。だが日本の投資家があまり目を向けない原子力という分野に、機関投資家は今注目しているのである。