ジェフリー・ガンドラック氏のDoubleLine Capitalによる毎年好例の円卓会議で、デイヴィッド・ローゼンバーグ氏がアメリカ経済と財政赤字の関係について論じている。
アメリカの財政赤字
引き続き、今年の金融市場のテーマはアメリカの財政赤字である。アメリカは赤字のために米国債を大量発行しなければならず、多くの機関投資家が国債の買い手不足を心配している。
ローゼンバーグ氏もアメリカの財政赤字について次のように感想を述べている。
2024年、財政赤字がGDPの6%以上になる年がもう1年続くとは予想していなかった。
これはトランプ氏が大統領になる前の数字だ。
アメリカのGDP比の財政赤字は次のように推移している。(グラフには最新の2024年の数字はまだない。)
財政赤字とGDP
アメリカの財政赤字は、景気後退のたびに大きくなりながら、景気後退が終わっても元の水準に戻ることはなく、大きくなり続けている。
そして今や6%である。ローゼンバーグ氏はこの水準について次のように述べている。
GDP比6%の財政赤字を出している国は他にない。その他のOECD加盟国の平均は3%だ。アメリカは6%だ。
ここで注意してもらいたいのは、GDPの定義上、政府による財政支出はその金額がそのまま名目GDPに加算されるということである。
つまり、アメリカの名目GDPは政府の財政赤字によって他国よりも大幅に(GDPの3%分)人工的に押し上げられているということである。
アメリカの名目GDP成長率は5%で、インフレ率を差し引いた実質GDP成長率は2.7%である。
つまり、名目GDP成長の半分ほどが過大な財政赤字のせいということになるので、実質経済成長についてもローゼンバーグ氏は次のように計算する。
それは経済成長の半分に相当する。それをすべて剥がせばアメリカの経済成長は1.5%になる。3%ではない。
財政赤字の行方
それは日本など他の先進国とほとんど変わらない数字ではないか。米国経済の優位性はかなりの程度、紙幣印刷して財政赤字を撒き散らしても通貨が下落しないことによって支えられている。つまりドルが基軸通貨だからである。
スタンレー・ドラッケンミラー氏の以下の記事を参考にしたい。
問題は、アメリカのGDP成長の半分を支えている財政赤字の持続可能性が危ぶまれていることである。
今、株式市場では米国株だけが独走している。米国債の買い手不足で財政赤字が続けられなくなったら、アメリカ経済はどうなるのか。しかも今の財政赤字はアメリカ経済が堅調な状況での数字である。
ローゼンバーグ氏は次のように述べている。
これまでは、6%もの財政赤字は景気後退と戦うための数字だった。アメリカは景気後退と戦うための財政赤字を撒き散らしているが、景気後退は存在していない。
景気後退になれば今以上の財政赤字を垂れ流すことになる。その時発行される米国債に買い手はいるのか。
筆者はその時に遂にドルが大幅下落するのではないかと考えている。レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想したアメリカの覇権の終わりの始まりである。
世界秩序の変化に対処するための原則