引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)におけるCNBCのインタビューである。
今回は金利と株価の関係について語っている部分を紹介したい。
米国株のバリュエーション
今年のテーマはアメリカの金利と財政赤字である。前回の記事ではダリオ氏も他の機関投資家たちと同様、米国債の下落による金利上昇について警告していた。
アメリカでは去年から利下げが開始されたにもかかわらず、長期金利が上昇している。スタンレー・ドラッケンミラー氏などはアメリカの財政問題を警告し、見事にこの金利上昇を予想してみせた。
金利が上昇しているとなれば、気になるのは株価への影響である。ここまで好調な米国株だが、ダリオ氏はどう見ているのか。
ダリオ氏は次のように述べている。
株式市場はかなり割高なところまで来ている。いくつかのセクターは特にそうだ。
やはりダリオ氏も米国株のバリュエーションを気にしている。筆者も含め、多くの投資家が気にしているのは米国債の金利と比較した場合の米国株のバリュエーションである。
投資家がよく見る株価収益率は、株価と純利益の関係を示す数字である。デイヴィッド・ローゼンバーグ氏は、現在の株価収益率では米国株のパフォーマンスは米国債を買って4%の金利を得る場合のパフォーマンスにさえ負けてしまうとして、今の株価で米国株を買う理由はないと酷評していた。
金利が上がれば、リスクを取って株を買わなくても国債を買うだけで十分な利益が得られてしまう。だから金利上昇は株価にとって脅威なのである。ダリオ氏は前回の記事で次のように言っていた。
国債の金利は株式市場や債券市場などすべての市場、すべての借り入れ、すべての貸し出しの背骨にあたる。
金利上昇と株価
問題は、アメリカの財政赤字は大きく、このまま国債の大量発行が続くと金利が更に上昇するとダリオ氏が予想していることである。
今でさえ国債に負けるバリュエーションになっている米国株は、財政赤字が抑えられず金利が更に上がればどうなってしまうのか。
ダリオ氏は次のように予想している。
現在の株価収益率で金利が上がってゆくことになれば、バブルは崩壊する。
それは2018年や2022年の下落相場のような状況である。どちらも利上げによる金利上昇が株安に繋がった相場だが、今回は利下げによる金利上昇で株安になってしまうのだろうか。
AI銘柄は買いか
一方で、ダリオ氏はセクターごとに見れば有望な銘柄もあるという。
ダリオ氏は次のように述べている。
今の株高は素晴らしいセクターによって先導されてはいる。AIなどのイノベーションを起こす企業だ。
株式市場の目線はAIをどう使うかまでに落とし込まれていないと思う。
中国や他の場所でAIがどのように使われているかは非常に興味深いが、AIの利用は市場にまだ織り込まれていないと思う。
AIブームでは、NVIDIAのようなAIの演算に直接使われる部品を供給する企業の株価が大きく上がったものの、AIを利用して利益を得る側の企業の株価ブームにはまだなっていない。
筆者もNVIDIAで大きな利益を上げた後、LumentumなどのAI向けデータセンターで使われる商品を製造する銘柄に切り替え、そのトレードは成功しているが、AIのユーザ企業で有望な銘柄はまだ見つけられていない。
結論
ダリオ氏は何か良い銘柄を見つけたのだろうか。だが米国株全体のバリュエーションに警戒しながらも、個別銘柄には望みを捨てない姿勢は以下の記事におけるドラッケンミラー氏と共通している。
だが米国株のバリュエーションが米国債以下という異常事態になっていることは頭に入れておくべきである。ダリオ氏はこう述べている。
素晴らしいイノベーションや変化が起こっているのは確かだが、人々は金利や株価収益率に十分な注意を払っていない。