引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のCNBCによるインタビューである。
今回は米国経済と米国株について語っている部分を取り上げたい。
米国経済の見通し
前回の記事では、ドラッケンミラー氏の金利に対する見方を取り上げた。
ドラッケンミラー氏は去年のアメリカの利下げ開始の時から金利上昇を予想しており、それが的中した今も米国債の空売りを続けているという。
米国債には悲観的な見方をしているドラッケンミラー氏だが、アメリカ経済についてはかなり強気である。
ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
アメリカ経済は興味深い状況にある。失業率は4%と非常に低い。GDP成長率は3%だ。
わたしはこの業界に49年いるが、この政権交代は史上もっとも反ビジネス的な政権からその真逆への移行ということになる。
ドラッケンミラー氏によるバイデン政権の酷評である。
バイデン政権の理不尽な規制
日本製鉄の件でも分かることだが、バイデン政権の行動原理は特定の票田のために商取引を歪めることであり、議会に呼び出されて袋叩きにされた経験のあるMetaのマーク・ザッカーバーグ氏などは、民主党に共和党寄りのコンテンツを削除するよう脅されたと打ち明けるなど、商業界ではトランプ氏の勝利でこれまでの民主党政権への恨み言が噴出している。
また、選挙戦ではトランプ氏は、バイデン氏がウクライナ戦争の前に自国の天然ガスパイプラインを停止に追い込んだ上でロシアのパイプラインを承認したことを痛烈に批判していた。
横に居たイーロン・マスク氏も「意味が分からない」と笑っていた。
トランプ政権とアメリカ経済
だが厄災は終わった。ドラッケンミラー氏はファンドマネージャーとして企業のトップから景気の話を聞くことを好むが、それを踏まえて次のように言っている。
多くの企業やCEOたちと話をしているが、CEOたちは「ほっとした」から「浮かれている」の間ぐらいだ。だから企業の間でアニマルスピリットが生まれたと信じている。
アメリカ経済は少なくともあと半年は非常に強いままだろう。
かなり強気なアメリカ経済に対する見方である。ということは、米国株はどうなるのか。
米国株の相場観
ドラッケンミラー氏は株式市場については次のように述べている。
市場はどうかと言えば、やや複雑だ。アメリカ経済についてはバラ色の未来を語ったが、米国株の益利回りを債券の利回りと比べると、過去20年でもっとも魅力のないレベルに下がっている。
従って株式市場は強い実体経済と、その結果としての金利上昇のはざまで揺れることになる。
益回りに関する話は、デイヴィッド・ローゼンバーグ氏が詳しく解説している。
簡単に言えば、米国債の金利が5%近い今、米国株の平均的なリターンはそもそも株を買わなくとも国債を買うだけで手に入るから、株を買う理由がないということである。
だがドラッケンミラー氏はアメリカ経済に関しては強気の見方をしている。では結論はどうなるか? 筆者と同じである。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
だから株式市場に関しては上か下かという強い意見は持てない。
市場全体についてあれこれ考えず、個別株に集中したい。
結論
筆者も以下の記事で紹介した個別株に集中している。特にLumentumは好調である。
2016年からの前回のトランプ相場では金利上昇・株価上昇がトレンドだった。今では信じられないが、「トランプ氏が勝利すれば株価は暴落する」というのが当時の市場のコンセンサスだった中、ドラッケンミラー氏はトランプ相場をいち早く予想した機関投資家だった。
だが今回は同じ金利上昇でもドラッケンミラー氏の反応が少し違う。
2016年のドラッケンミラー氏の反応と読み比べてみるのも面白いだろう。