フォン・グライアーツ氏: ゴールドが高過ぎると思う人でもシルバーならまだ間に合う

引き続き、Von Greyerzのエゴン・フォン・グライアーツ氏の自社配信動画である。今回は紙幣の価値下落、つまりインフレと通貨安から資産を守るための手段としてゴールドだけでなくシルバーについて語っている部分を紹介したい。

紙幣の価値が下がってゆく

これまでの記事では、フォン・グライアーツ氏は通貨の価値の長期的下落について語っていた。現代において各国の中央銀行が紙幣印刷を行い、コロナ後においてはそれを政府が現金給付という形でばら撒いて、それで世界的なインフレが発生した。

だがそれは今だけの話ではない。歴史上、あらゆる通貨は政府によって価値が下げられてきた。あらゆる国で金貨や銀貨は政府によって貴金属の含有量が恒常的に減らされてきたが、それは現代において中央銀行が紙幣を好きに印刷していることと同じ話である。

そしてフォン・グライアーツ氏はインフレがまだ収まったとは考えていない。2024年になって多くの機関投資家が気にし始めた国債危機を、フォン・グライアーツ氏も懸念しているからである。

ゴールドとシルバー

政府がこのまま紙幣印刷や現金給付を止めず、政治家とその票田だけが利益を得、ほとんどの人は給付金も得られない上に増税とインフレだけ受け取るとしたら、人々はどうすれば良いのか。

これまでの記事ではフォン・グライアーツ氏はゴールドを奨めていたが、ゴールドはコロナ後の上昇相場でかなり高くなっている。

金価格の長期チャートを掲載すると次のようになっている。

ポイントは1970年代の物価高騰と、リーマン・ショック後の量的緩和による2012年の金価格高騰だが、現在の金価格はその2つのピークを両方上回って史上最高値付近で推移している。

一方で、ゴールドとともに歴史上通貨の代わりになり続けてきた金属がある。それはシルバーである。フォン・グライアーツ氏はシルバーについて次のように述べている。

シルバーは今1オンスあたり30ドルで、これは極めて割安だ。

シルバーは最終的にゴールドよりも上昇速度が速くなると考えているが、上下動が激しいのでゴールドよりリスクが高い。

何故シルバーが割安と言えるかと言えば、銀価格は1970年代のピークも2012年のピークもまだ超えていないからである。

割安なシルバーとインフレ相場

筆者も前からシルバーを推しているが、インフレ相場が継続すると考えるのであれば、シルバーは明らかに買いである。

1970年代のインフレ相場では、シルバーもゴールドと同様に物価高騰によって価格が何十倍にも高騰した。

インフレ相場がまだ終わっていないと考えるのであれば、シルバーはいずれゴールドに追いつくか、その近くまでは行くはずである。それがフォン・グライアーツ氏が「シルバーはゴールドより速く上昇する」と述べている理由だろう。

フォン・グライアーツ氏は次のように付け加えている。

ゴールドが高過ぎると考える人にはシルバーをお勧めする。そうすれば、危機が始まってお金が必要になった時にも資産を守ってくれるだろう。

結論

危機とは何か。実際に政治家のインフレ政策によって最終的にハイパーインフレになったアルゼンチンを救ったハビエル・ミレイ大統領は、それを誰よりもよく知っている。

「先進国ではハイパーインフレは起きない」と人は言うが、それは単純に歴史的事実に反する。先進国どころか、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏は歴史上の覇権国家が負債とインフレで没落していった様子を『世界秩序の変化に対処するための原則』で解説している。

それにアルゼンチンの1人当たりGDPは日本より高かったが、アルゼンチンも通貨安とインフレで没落したのである。

アベノミクス後に日銀の量的緩和によって円の為替レートが半分まで下落していながら、日本がアルゼンチンに近づいていないと考える人が居るとすれば、それは単に事実を見ていないだけだろう。

だからフォン・グライアーツ氏は次のように言っている。

危機は起きる。経済的な危機になり、それが社会不安に繋がる。

ゴールドか、それが高過ぎると思うならシルバーを買って、安全なところに仕舞っておき、人生を楽しむといい。

結局は、食べ物を買うだけのお金と雨風を凌ぐ場所さえあれば、人生はあとは互いに助け合う友達と家族がすべてだからだ。

あなた自身とあなたの家族を守るために行動する時は今であって、危機が実際に起こってからではない。

日本円の価値が半分になる前に行動したかっただろうが、フォン・グライアーツ氏によれば、まだこれからなのである。


世界秩序の変化に対処するための原則