ローゼンバーグ氏、米国株のバリュエーションを酷評

Rosenberg Researchのデイヴィッド・ローゼンバーグ氏がデイヴィッド・リン氏によるインタビューで米国株のバリュエーションを酷評している。

2024年の米国株上昇

2024年の米国株は好調だ。1月からかなりの上げ幅となっている。S&P 500のチャートは次のようになっている。

特に、9月以降の株価上昇は長期金利がむしろ上昇する中での株価上昇だということを筆者は何度も指摘しておいた。

株価は金利低下で上がるべきなのに、逆行している。

年間を通して見ても金利はむしろ上がっている。しかし株価も大きく上がっている。

株価上昇の原因

だからこの株価上昇は金利低下によるものではなく1株当たり純利益の上昇によるもののはずなのだが、ローゼンバーグ氏によると理屈が合わないのである。

ローゼンバーグ氏は次のように言っている。

1年前のコンセンサスでは、米国株の2024年の利益上昇は10%だった。実際には8.5%近辺になりそうだ。

だが株価の方は数日前の数字でほとんど30%近く上がっている。

金利は上がっているのだから、金利と利益に影響される株価の上昇幅は、利益の上昇より低くあるべきだ。だが実際には米国株の上昇幅は利益の上昇を20%程度も上回っている。

しかも米国株のバリュエーションは、米国債と比べた時に更に理屈に合わないのである。

ローゼンバーグ氏は次のように解説する。

どのような理性的な人間が22倍や23倍の株価収益率の株式に投資をするんだ? 株式にはリスクプレミアムがない。株式の利回りは3ヶ月物の米国債の利回りと同じだ。

S&P 500の株価は6,040ドルで、2024年の1株当たり純利益は209ドルと予想されている。純利益とは株主の取り分となるお金のことなので、これはつまり投資した資金に対して3.4%返ってくる投資である。

それに対して米国債の利回りはどの期間のものを取ってもおよそ4%半ばだ。つまり、厳密に計算すると米国株は米国債よりもリターンが低い。

株価が織り込んでいるもの

だからローゼンバーグ氏は「どんな理性的な人間が米国株に投資するんだ」と言っている。

1つの可能な説明は、株式の利益は国債とは違って成長するというものである。

ローゼンバーグ氏は次のように言っている。

この状況で投資をするのは、今後5年で生成AIが業界の生産性とコストの構造と利益を著しく変えることを期待している人だけだ。

現在の株式市場が織り込んでいる利益成長は、年率平均20%の成長が5年間続くというものだ。それは不可能ではない。過去にはそういう時期がないでもない。だがそれは確率5%程度のイベントだ。

上の数字はS&P 500の数字なので、AIとは無関係の企業も含めて米国株がそういう成長になるということを株価が織り込んでいることを意味する。

筆者の見方はこうである。AIブームについては、実際に売上が急上昇すると見込める企業だけに投資をすべきだ。例えば以下の記事で筆者はLumentumを推している。

そしてAIプラットフォームのPalantirの株価上昇についてはやり過ぎだと分析してきた。

銘柄選びが重要なのである。株価指数を買うというのは、そういった企業をすべて一緒くたにして買うということである。

ただ、それにしても米国株が上がりすぎの状態にあることは認識しておくべきだろう。個別株には賭けても米国株全体には賭けない、あるいはリスクをヘッジしておくということを筆者は徹底している。

ローゼンバーグ氏は次のように結論している。

株式のリスクプレミアムがゼロだということは、市場の織り込みでは株式は無リスク資産だという意味だ。

もしあなたが米国株を米国債と同じリスクの資産だと思っているなら、米国株はあなたのための資産だ。