The Solid Ground Newsletterのラッセル・ネイピア氏がHidden Forcesのインタビューで、アメリカと中国の対立が第2次世界大戦前夜を彷彿させると語っている。
中国とウクライナと中東
ウクライナとパレスチナで戦争が起こっている。アメリカがウクライナとイスラエルを支援していることは周知の事実だが、ネイピア氏はこれらの戦争における中国の役割を指摘している。
ネイピア氏は次のように指摘している。
誰もが同意するわけではないと思うが、西側諸国は既に中国と2つの代理戦争を戦っている。
1つはウクライナの戦争であり、中国はロシアから原油を買うことでロシアを経済的に支えている。
中国は確かにロシアから原油を買うことでロシアの経済を支えている。アメリカとヨーロッパがロシアからエネルギー資源を買うなと全世界に圧力をかけたとき、中国はその経済制裁に乗らなかった。
だがそれを中国の代理戦争と言うのは無理があるだろう。それならばインドなどの他の国もロシアへの経済制裁に加担していないので、インドもアメリカと代理戦争をしていることになってしまう。そもそも欧米諸国も間接的にはロシアの原油を買っているのである。
また、アメリカなどは戦争前からウクライナに補助金を与えて言うことを聞かせており、中国がロシアと商取引をしているのとは次元が違う。
一方で、軍事関連の商取引は状況がより微妙である。ネイピア氏はこう続けている。
EUは、ロシアの軍事ドローン製造を支えている中国の企業に制裁を課すことを話し合っている。
CIAによれば、ロシアの軍用品から発見されたマイクロチップの80%は中国が製造したか供給したものだ。CIAは常に信用できるわけではないが、情報源の1つだ。
中国と欧米の禁輸
いずれにしても、国家が戦争を生き抜くためには貿易も軍備も必要である。だから中国(やインド)のこうした行動を、欧米諸国が邪魔に思っていることは確かである。
また、ネイピア氏は状況がウクライナだけの話ではないことを次のように指摘している。
もう1つの代理戦争はもっと異論が出るだろうが、中国はイランから原油を買っている。そしてイランは中東でいくつかの組織の資金源となっている。
イランはパレスチナのハマスや、イスラエルと敵対しているレバノンのヒズボラなどを支援している。
欧米諸国はこうした繋がりを断ちたいと考えている。それで経済制裁なのである。特に今重要視されているのは半導体チップであり、これがなければ様々な機械が動かない。
それで欧米諸国は中国に対してチップを禁輸するという話になるのである。
歴史は繰り返すのか
経済制裁によって自分が敵とみなしている国を締め付けてゆく。この状況は何かに似ていないか。
ネイピア氏は次のように言う。
今の状況は1930年代の日本を思い出させる。
当時、日本が中国を侵略し、日本には物資の禁輸を含む経済制裁が課された。日本はそれによってより外に向けて出ていかなければならなくなったという意見もある。
日本は原油を禁輸されたことで、原油を求めて更に領土を拡大することを余儀なくされた。
更に言えば、NATOがわざわざロシアの国境まで押し寄せてきて、ウクライナの政治に介入してウクライナの反露感情を煽り、ロシアに手を出させてロシアが戦争を始めたと主張する、そのやり方が太平洋戦争のそれとまったく同じである。
だからトランプ氏はそれを止めようとしている。しかしパレスチナに関しては、彼の支持基盤であるキリスト教保守派がイスラエル支持のため彼は当てにはならないだろう。
ロシアは既に戦争に引きずり込まれた。だがロシアはGDPが韓国と同じくらいの小国に過ぎない。もともとアメリカの相手にはならないのである。ロシアの脅威を誇張すること自体がウクライナでの戦争を支持するグループの印象操作である。
だが中国は話が別だ。中国は実際にアメリカに匹敵する大国である。中国に対する欧米のこうした戦略がエスカレートすれば、第2次世界大戦に突入していった日本と同じ状況に追い込まれる可能性はある。
結論
投資家は地政学的な話よりもアメリカの債務の問題や、経済制裁によるドル離れの問題など、経済に直結する話を重視しがちである。
だがすべては繋がっている。アメリカが米国債の金利上昇で利払いの資金繰りに困り、軍事費を拡大できない状況に陥ったとき、これまでのように他国を無条件では威圧できず、他国の反撃に遭って戦争になる。
それがレイ・ダリオ氏の著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で予言されていることである。そこには覇権国家のインフレと債務膨張が戦争に繋がる理由が説明されている。
そしてネイピア氏も同意見のようである。ネイピア氏は次のように言っている。
だから注意するべきだ。1930年代を繰り返したくはないだろうから。
投資家はもう少しこのシナリオを真剣に考えるべきだろう。少なくとも状況はそこへ向かっているように見える。
世界秩序の変化に対処するための原則