レイ・ダリオ氏、AI銘柄がバブルになっている理由を語る

引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏のInvestopediaによるインタビューである。

今回はAIについて語っている部分を取り上げる。

AIと様々な業界

ChatGPTの登場以来、AIは大きな注目を集めており、莫大な設備投資がなされている。

莫大な設備投資ということは、お金が注がれる企業は儲かっているということだ。その筆頭はもちろんAIの演算に使われるGPUを作っているNVIDIAである。

業界内部の動き

だが数年で10倍にもなったNVIDIAに注目しているだけではプロの投資家とは言えない。

NVIDIA以外の部分ではビジネスに何が起こっているのか。ダリオ氏は次のように述べている。

いまは技術革新の時代だ。技術革新は、一部の人にとってはプラスで、一部の人にとってはマイナスになる。

売上高が急成長している企業はもちろん調子が良いが。

AIが台頭してきたことでビジネス界はどのように動いているのか。大金がNVIDIAのGPUに投入されているのだから、大きな動きがあるはずだが、多くの投資家はNVIDIA以外の動きを知らない。

ダリオ氏は次のように続けている。

これは企業にとって戦争だ。この戦争は企業にとって非常に重要なので、設備投資をした資金を取り戻せるかどうかは問題ではない。競争相手に勝つか、すべてを失うかだ。

それが「一部の人にとってはマイナスになる」の意味である。AIによる社会の変化についていける企業にとっては、例えば電話やチャットの窓口をAIにすることでコスト削減などが可能だが、ついていけない企業にとっては競争相手よりも大きく不利になるリスクをはらんでいる。

パソコンが出たことでタイプライターは死んだ。変化とはそういうものである。そしてダリオ氏の指摘する重要な点は、競争相手に勝つためには設備投資が返ってくるかどうかは度外視だということである。

そこにNVIDIAの急激な売上高成長率の秘訣がある。AIに大量の資金が注ぎ込まれている。

そしてダリオ氏は、それが単に企業の問題に留まらないことを指摘している。

これは国家の生存の問題でもある。それは利益を出すことよりも重要だということを意味する。お金よりも重要な問題なのだ。

これは利益が二の次になる戦争だ。

中国とアメリカが半導体チップをめぐって争っている。AIはドローンなどにも使える可能性があるので、AI技術での敗北は軍事での敗北に繋がりかねない。

だからAIには今、採算度外視の資金が流れ込んでいる。それが今のAI相場だということを理解する必要がある。

AIバブルの先へ

逆に言えば、この採算度外視のAIへの資金流入は何処かの時点で終わるということである。その後は採算の取れるAIの使い方だけが選別され、そこに通常の資金が流れ込むことになる。

初期の設備投資が最初に完了するのは、一番最初に設備投資が始まった分野である。その1つはGPUだろう。NVIDIAといえども、現在の莫大な資金流入が終わって普通の売上成長へと移行する時が来る。

実際、以下の記事で説明したがNVIDIAの売上高成長率は、まだ高いがだんだん下がってきている。だから筆者は代わりに次のAI銘柄であるLumentumに移行している。

この記事で書いたが、Lumentumの売上高成長率は+135%(つまり2倍以上)と予想されている。ちなみにNVIDIAは+48%である。

当然だが株価もNVIDIAより好調である。この銘柄は筆者のポートフォリオの最大銘柄である。

これからのAI銘柄

だがダリオ氏の言うように、株式市場の興味は徐々に別の銘柄に移ってゆくものである。コロナ初期の相場でも最初はNetflixなどの巣ごもり銘柄がもてはやされたが、徐々に別の銘柄へと主役は移っていった。

今は筆者は自分の資金をLumentumに置いているが、恐らく来年の何処かのタイミングで利益確定することになるだろう。

ではその次にAIによって成長する銘柄は何か? これまではNVIDIAやLumentumのようにAIを作るための企業の株価が上昇してきたが、ダリオ氏が注目するのはAIを使う側の企業である。

ダリオ氏は次のように述べている。

良い状況に置かれているのは、それを上手く使う企業だ。半導体チップを作る企業は十分注目されている一方で、そうした企業はまだあまり注目されていない。

どういう企業がAIを使って利益を伸ばすのか。ダリオ氏は自分自身のいる金融業界を例に挙げている。

ダリオ氏はAIが出てくる前にも、自分の投資方針をアルゴリズムに変換して投資判断を自動化するということをやってきたヘッジファンドマネージャーである。

だから当然、AIをヘッジファンドの投資判断に利用することを考えている。(AIに投資方針を聞くということではない。)

同じくAIの未来に期待しているスタンレー・ドラッケンミラー氏も、ヘッジファンドにおけるAI利用について以下のように言っていた。

AIは副操縦士になることが出来る。そしてそのタッグは無敵で、人間だけではとても敵わない。

直観を持った投資家がAIやその他のものを補助に使えば、その人が世界最高の投資家になるだろう。

AIは投資家の情報収集に大いに役立つだろう。新たな銘柄を見つけたり、世界有数の高給取りであるヘッジファンドのアナリストがAIで置き換えられるかもしれない。代わりにAIにリサーチをやらせれば良いからである。そのコスト削減分は企業にとって利益増となる。

ダリオ氏も同じ未来を見ているようだ。ダリオ氏は次のように言っている。

だからAIにはわたし自身もとても興奮している。金融は1つの分野に過ぎないが、ヘルスケアなど別の多くの分野でも同じことだ。

筆者もLumentumを利益確定する来年にはその次のAI銘柄を探さなければならなくなる。AI関連銘柄についてはこれからもここで報じてゆく。

Lumentumについては以下の記事を読んでもらいたい。