サマーズ氏: 米国経済に恐慌でもない限りインフレ率は下がらない

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がハーバード大学での講演でアメリカのインフレ率について語っている。

アメリカのインフレ率

アメリカのインフレ率はコロナ後に9%まで上がった後に2%台まで下落した。Fed(連邦準備制度)は利下げを開始し、トランプ新大統領も安心して景気刺激を行なうだろう。

そこでインフレ率は本当に利下げや景気刺激をして良いほど落ち着いたのかということが問題になっている。スタンレー・ドラッケンミラー氏やポール・チューダー・ジョーンズ氏は利下げと財政出動でインフレが再燃すると予想している。

一方で、ここまでのインフレ率下落を予想的中させてきたジェフリー・ガンドラック氏はインフレ率がこのまま下がり続けると予想している。

サマーズ氏のインフレ率予想

サマーズ氏はどうか。物価のうちいくつかの品目についてはサマーズ氏は次のように述べている。

ガソリン価格が下がる可能性はあるか? イエスだ、上がったり下がったりするものだ。

何種類かの野菜の価格が下がる可能性はあるか? イエスだ、価格は上下するものだ。

金融市場で取引される品目は読みにくいということだろう。トランプ氏は原油価格の押し下げを公約にしているが、実現可能性については以下の記事で解説しておいた。

だがインフレを全体で見るとどうなるか。サマーズ氏は次のように述べている。

CPI(消費者物価指数)やその他の指標で図る物価全体が下がる可能性はあるか? ノーだ、それはありそうにない。もしそれが起こるとすれば恐ろしい恐慌が起きるシナリオにおいてだけだ。

アメリカのインフレ動向予想

ガンドラック氏はトランプ氏の景気刺激で景気は持ち直すがインフレは下がり続けると予想した。サマーズ氏は、そんな都合の良いことは起きないと予想している。インフレ率が下落するときは、景気が落ち込むときだけである。

筆者の予想はどうか。今後のインフレ率を考える上では、前トランプ政権でのインフレ率の推移を考える必要がある。2017年からの前トランプ政権の4年間では、コロナ禍だった最後の2020年を除けば、インフレ率はおよそ2%で推移していた。

法人減税や財政支出をやった上で2%だったのだから、トランプ氏はそれをある程度計算してやったはずだ。2020年でさえもロックダウンで急降下していたインフレ率を現金給付で2%に戻しかかっていた。

だから筆者の予想はこうだ。もしインフレ率が2%に届いていない状況になったとすれば、トランプ氏はまだ緩和の余地があると考えるだろう。だから2%より低いインフレ率は維持されない。トランプ氏によって少なくとも2%まで戻されるからである。