これまでトランプ相場における金利の動向を見事に言い当てている著名債券投資家のジェフリー・ガントラック氏が再びアメリカの長期金利について語っている。Reuters(原文英語)が報じた。長期金利はドルと株価の見通しを決定する非常に重要な指標であり、多くの著名投資家が見通しを語っている。
ガントラック氏のトランプ相場予想
アメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利した後、経済成長とインフレを織り込もうとした金融市場では金利が上昇した。しかしガントラック氏は12月、長期金利が1.8%から2.4%まで上昇すると、この辺りが天井でドルは一時的に下落、金価格は逆に上昇すると予想した。この予想は当たっている。
長期金利のチャートは以下のようになっている。
金価格の推移は以下の通りである。
ガントラック氏はこの動きについて以下のように語っている。
安全資産への逃避が密かに行われている。ドイツ国債が金利低下を先導しており、金価格は上昇している。投機筋はまだ巨大な債券空売りポジションを抱えており、彼らは踏み上げに遭っている。
トランプ相場が始まって以来、多くの著名投資家が債券の空売りを行ってきた。債券の金利上昇は債券価格の下落を意味するため、金利上昇に賭けるためのトレードは債券の空売りということになる。ガントラック氏はそうした投機筋が一時的に空売りの買い戻しを余儀なくされていると言っているのである。
長期金利見通し
アメリカの長期金利はドル相場や金価格、株価など広範囲の資産クラスに大きな影響を及ぼしており、特に現在の相場では金利の水準を予想することが非常に重要である。では長期金利は今後どのようになってゆくのか? ガントラック氏は次のように述べている。
再び上昇を始めるまでに、10年物国債の金利(訳注:長期金利)は2.25%までは下がると思う。2%までは下がらないだろう。
上記のグラフの通り、長期金利は既に2.3%近くまで下落しているため、2.25%はすぐであると言える。ガントラック氏の言うレンジは、ドル円で言えば111.50から109.50付近、金価格で言えば1,270ドルから1,300ドル程度の水準である。ドル円はこれまで次のように推移している。
米国政府は低金利を利用すべき
また、ガントラック氏によれば米国政府は金利が一時的に低下している状態を利用すべきだという。金利とは借金を刷る側が支払う利払いの大きさを示すものであるため、国債を発行して借金をする米国政府としては、金利が低ければ低いコストで借金をすることが出来るということになる。
トランプ政権が本当に2%のインフレと2%の実質経済成長を継続的に実現出来るとすれば、理論的には長期金利は4%まで上昇してしまう。そうであれば、長期金利が2.3%程度である今、より長期の国債を発行すべきだとガントラック氏は言っている。彼は次のように主張する。
自分なら、市場が受け入れられる最大限長期の国債を発行する。40年物から始めると良い。そして市場が受け入れるなら、期限をより長くしてゆく。可能ならば100年物だ。今は良いタイミングだと思う。
国債の期限とは、要するにどれほど長くお金を借りているかということである。10年物国債であれば10年間お金を借りるということになる。
現在、米国政府が発行している最も長期の国債は30年物であり、その金利は3%程度である。40年物や50年物が出るとすれば、より金利の高い国債が産まれるということになる。
こうした超長期国債の発行は実際にトランプ政権が検討しているものなのだが、注意すべきなのはガントラック氏が「市場が受け入れる限り」と言っている点である。経験ある投資家ならば分かることだが、超長期国債の発行は注意して行わなければ株価に非常に大きな影響を及ぼしてしまう。この点についてもまた纏めたいと思う。