やや遅くなったが、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fから、クォンタムファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィス、Duquesne Family Officeのポートフォリオを紹介したい。
ドラッケンミラー氏の相場観
米国株は紆余曲折はあるものの上がっている。アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利し、基本的にはトランプ氏の景気対策が株価にとってプラスになるという見方からだろう。
ドラッケンミラー氏はと言えば、今の彼の主戦場は債券市場である。ドラッケンミラー氏はトランプ氏が財政支出を増やし、それがインフレと国債価格下落に繋がると予想している。
株式市場に関して言えば、金利上昇が重荷にはなるものの、まだ赤信号にはなっていないとの見方を示していた。
だから仮に米国株が割高だとしても、まだ推しの個別銘柄を撤退させるほどだとは思っていないらしい。Form 13Fに報告されているポジションの総額も以下のように前回からほとんど変わっていない。
- 2024年6月末: 29億ドル
- 2024年9月末: 30億ドル
AI銘柄Coherent
では個別銘柄はどうか。前回6月末のポートフォリオでは、ドラッケンミラー氏の最大ポジションはAI銘柄のCoherentだった。
ドラッケンミラー氏が元々買っていたAI銘柄はNVIDIAだった。NVIDIAはAIの複雑な演算を行うGPUを製造している会社で、まさにAI銘柄のど真ん中である。
NVIDIAに早期から投資していたドラッケンミラー氏は大きな利益を上げた。だがNVIDIAが当初ほどの割安ではなくなったことで、ドラッケンミラー氏はCoherentに乗り換えた。
Coherentは光ファイバーの信号をデータに変換する光トランシーバーの製造最大手である。光ファイバーは何処にでも使われているが、なぜCoherentがAI銘柄なのかと言えば、AIに対応したデータセンターではGPUを並列させて処理するために、サーバ間の高速なデータ転送に使える光トランシーバーを爆買いしているのである。
だからCoherentの売上はNVIDIA並みの成長速度で成長している。Coherentは夏以来筆者の推奨銘柄でもあったが、株価は次のように大きく上昇している。
だが以下の記事で書いた通り、CoherentのバリュエーションがNVIDIAをそれほど変わらなくなってきたことから、筆者はCoherentを利益確定している。
ドラッケンミラー氏はどうしたか。今回の開示でドラッケンミラー氏はCoherentの株数を17%減らし、ポジションの規模は2.7億ドルとなってドラッケンミラー氏の個別株第3位となっている。ドラッケンミラー氏もCoherentのバリュエーションを多少気にしているようである。
ちなみに筆者はCoherentから光トランシーバー業界第2位のLumentumに移っている。
こちらはCoherentより更に上がっているが、それでもまだ安いと筆者は考えている。その理由は以下の記事に書いたのでそちらを参照してもらいたい。
DNA検査のNatera
ドラッケンミラー氏もAIそのものには大きな期待をしているが、銘柄選択に苦慮しているようだ。
それでCoherentに代わり何がドラッケンミラー氏の最大ポジションになったかと言えば、DNA検査の会社であるNateraである。4.5億ドルのポジションとなっている。
こちらも9月末から大きく上がっている。NVIDIAの早期投資もそうだが、ドラッケンミラー氏の銘柄選択は天才的である。