他のヨーロッパ諸国が望んでいないにもかかわらず、EUでの移民政策を強行したドイツが、今度はドイツ国内に流入した移民を追い出したいらしい。
ドイツはEU最大の経済大国としての地位を利用して、移民政策をEU全体に押し付けた。現在ヨーロッパ大陸の大部分は国境を撤廃するシェンゲン協定の域内となっており、ドイツが移民を受け入れるということはヨーロッパが移民を受け入れるということだからである。
ドイツ人の盲目的なボーダーレス信仰
ドイツ人がそれほどまでに移民政策を望んだことには文化的な理由がある。元々ヨーロッパで歴史的に「洗練された文化のない田舎者」としてイギリス人やフランス人から見下されていたドイツ人(プロイセン人)の中には、いつかドイツが偉大であることを他のヨーロッパ人に証明してやるという強い歴史的な感情が根付いていた。
第二次世界大戦でヒトラーが民主主義的に担ぎ上げられたのは、「ドイツ人は偉大な人種」であるというナチス・ドイツの人種差別的スローガンがドイツ人の共感を得たからである。
しかしドイツは敗北した。第二次世界大戦以後、「ヒトラーとともにヨーロッパを征服しようとした人種差別の国」という汚名を背負って生きてきたドイツ人は、以前にも増してドイツ人であることを誇ることが出来なくなった。
ドイツ人が身近に居る人は試してもらいたいのだが、彼らに「ドイツ人であることを誇りに思うか」と聞いてみれば、面白いほど一様に否定的な声が返ってくる。そしてそこには「本当は誇りたいのだが、ナチスドイツの歴史のために誇ることが出来ない」という本音が見え隠れする。
グローバリズムというドイツ人の希望
ドイツ人は長らくこうした国籍コンプレックスとともに生きてきた。しかしドイツ人にこの状況を打開する案が提示される。統一ヨーロッパとしてのEUと移民政策である。
国境さえ無くなれば、もうドイツ人というものは存在しなくなる。ドイツ人を田舎者と馬鹿にするイギリス人やフランス人も居なくなる。
しかも国境を取り払うというのは、かつてのナチスドイツの人種差別とは真逆の思想である。これでドイツ人はかつてのナチスドイツとは別物なのだと主張することが出来る。誰もドイツのことをナチス呼ばわりしなくなるだろう。ドイツ人はそう考えたのである。
ドイツ人はこの意味で、国境というものを取り払うことに取り憑かれている。結果、ドイツ人は移民政策を全面に押し出したメルケル首相を圧倒的に支持した。
メルケル首相の移民政策
そのメルケル首相はドイツ人の期待に応えることになる。彼女は2015年9月、移民受け入れは無制限だと宣言(sky news、原文英語)し、他のEU諸国にもそれに従うように釘を差した。
メルケル氏は「法的で人道的な援助が必要とされている時に援助を拒むような人々は容認されない」「抗議する者は恥さらし」(BBC、原文英語)とまで言い放った。
当時、ヨーロッパではメルケル氏の発言は不用意にヨーロッパへの移民流入を煽るものだとの声も上がったが、メルケル氏は聞く耳を持たず、メルケル氏の発言を聞いた中東の人々がヨーロッパに殺到した。その中にはシリア難民を装いながらアラビア語さえ話せない「難民」も多数いた(AFP)が、そうした事実はドイツには関係がなかった。ドイツには移民を呼び寄せる目的があったからである。
その後のことは読者も知る通りである。パリ、ブリュッセル、ニース、ミュンヘンなどで多くの人々が殺害され、ケルンやヘルシンキなどで多くのヨーロッパ人女性が性的暴行の被害に遭った。
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大晦日における移民による集団性的暴行は、ヨーロッパではもはや毎年恒例の行事となっている。すべてドイツ人が選んだことである。
事後処理に追われるドイツ
ドイツ人は多くの人々が殺されてようやくこの方法は上手く行かないと思ったらしい。
Reuters(原文英語)によれば、メルケル首相の直轄の部下である首相府長官のペーター・アルトマイヤー氏は、ドイツ政府が自分で呼び寄せた多数の移民を強制送還する構えであることを明らかにした。彼は以下のように述べている。
ドイツは昨年、難民申請が却下された8万人を出身国へ送り返した。これは史上最多の数字であり、そして人数は増えるばかりだ。2016年には70万人の難民申請者があり、30万人が却下されていたのだ。だからドイツはこれらの人々を速やかに出身国へ送り返す。そうしなければ法の秩序に則った国としての信用にかかわる。
だそうである。読者はどう思われただろうか?
しかし思い出してもらいたいのだが、中東からの移民を繰り返し煽り、それを他のEU加盟国にも強制したのはメルケル首相その人なのである。彼女の「無制限受け入れ」発言と、その移民の衣食住を税金で保証するという彼女の政策がなければ、その発言を受けてドイツを目指した多くの移民(難民ではない)も、自国で自分の生活をしていたことだろう。
アルトマイヤー氏は「信用にかかわる」と言っているが、彼が本当に気にしているのは信用ではなく2017年後半に行われるドイツの総選挙である。
移民政策の大失敗から、メルケル首相の支持率がドイツ国内でも下がっているのである。しかし、それでもメルケル首相の支持率は今年の調査で56%(朝日新聞)である辺りに、ドイツ人がどういう国民かを示唆するものがある。彼らの思惑は、もう読者も知っての通りである。
移民政策
以前からの読者には周知の通り、わたしはヨーロッパやアメリカ、そして日本で行われている移民政策にはパリで大量殺人が起こる前から反対している。移民政策はグローバル企業に安価な労働力を与えるためだけに移民と現地人の両方を不幸にする政策であり、決して実行すべきではない。
しかしドイツだけは別である。ドイツだけは自分で呼び寄せた移民を確実に受け入れ、そして十分に持て成してもらわなければ筋が通らない。
移民達はドイツが利己的な理由で呼びかけを行なったために命を失うリスクを犯してドイツまで来たのである。それを、ようやくたどり着いたかと思えば今度は選挙というドイツ人の勝手な都合で帰れと言われる。無茶苦茶ではないか? 暴動が起きても可笑しくはないし、移民には怒りを表明する権利があるだろう。
ドイツが一番非難されるべきなのは、こうした移民政策を難民のために行なったのではないということである。ドイツ人は自分の国籍コンプレックスを解消するという個人的な理由のためだけにヨーロッパ中を引っ掻き回し、難民を利用しようとした。他に理由など何も無かったのである。
結論
遠い昔、初めてアメリカに渡り、ユダヤ系アメリカ人の友人の反ドイツ感情に初めて触れた時のことが懐かしく思い出される。彼はドイツを嫌っているというより警戒していた。当時は彼は何故それほどまでにドイツ人を警戒しているのかと思ったものだが、今ならば彼の言うことが痛いほど理解できる。
ドイツは朝鮮や中国などよりもよほど関わってはならない国なのである。