引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のノルウェー銀行によるインタビューである。
今回はNVIDIAなどのAI銘柄について語っている部分を紹介したい。
AIブームの動向予想
米国の株式市場では、NVIDIAなどのAI銘柄の株価が急上昇していることが話題になっている。
AIの複雑な計算を処理するGPUを作っているNVIDIAの株価は次のようになっている。
ある人はバブルだと言い、ある人はAI銘柄の株価上昇は始まったばかりだと言う。
2年前にNVIDIAに投資をしたドラッケンミラー氏はどう考えているのか? ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
AIブームは弱まることを知らない。企業はAIブームに乗らないことを大きなリスクだと考えている。
AIにお金を使わなければ、競合企業がそうするだろう。そして競合企業が正しければ、それは自分にとって大きな問題になる。
ドラッケンミラー氏はAIへの投資は衰えていないと言っている。つまりAI銘柄に資金が流れ込み続けている。
AI銘柄の決算を見ている限り、それは正しいように思える。少なくとも減速の兆候を示すような決算に筆者は出会っていない。
ドラッケンミラー氏のNVIDIAトレード
ドラッケンミラー氏は、そのAIブームに真っ先に乗ることができたファンドマネージャーの1人である。ドラッケンミラー氏がNVIDIAに投資したのは去年の前半である。
ドラッケンミラー氏はどうやってNVIDIAを見つけたのか。彼は次のように述べている。
3年か4年ほど前に、スタンフォードやMITに行く若者たちや技術者たちの興味が暗号通貨からAIにシフトしているのに気付いたことが最初のヒントだった。
技術者たちは金融市場より先にトレンドの変化に気付いている。
その後、ドラッケンミラー氏の若い部下がNVIDIAに投資すべきだと言い出した。その辺りの経緯は以下の記事に書いている。
ドラッケンミラー氏がNVIDIAを買ったのは、コロナ後のインフレと金利上昇で米国株が下がっていた時期である。
当時、金利上昇に弱いハイテク銘柄は大幅下落していた。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
AIブームは大きな話だったのに、NVIDIAは400ドルから150ドル辺りまで下落していた。その時がわたしのAI投資の始まりだ。(訳注:株式分割により今の株価より10倍大きい表記になっている。)
その後NVIDIAは何倍もの株価に上がっていった。
NVIDIAの次のAIトレード
だがドラッケンミラー氏はNVIDIAを既に売却している。AIブームにはもう乗っていないのかと言えば、そうではない。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
ひとたびAIに投資をすると、AIについてどんどん詳しくなる。そうすると関連する業界が見えてくる。
AIは電力に影響する。ウランにも影響する。関連する業界すべてを検討した。AIブームはとても追いかけやすいトレンドだ。
例えばマイクロソフトは、AIに使う電力の供給のために原発事故で有名なスリーマイル島の原子力発電所と契約を結んだ。
原発を保有するConstellation Energyはそのために稼動停止していた原発の再稼働を決定した。
ドラッケンミラー氏の言うウランは、原子力発電の燃料となる鉱物である。ドラッケンミラー氏は明らかに原子力発電のことを言っているのだが、Constellation Energyに投資しているのだろうか?
一方で、ドラッケンミラー氏がNVIDIAの次に実際に最大ポジションとしてきたのは、AIのデータ通信に使われる光トランシーバーを製造するCoherentである。
この銘柄は筆者も推奨銘柄としてきた株だが、紹介記事の後に数十パーセント上昇している。
だがドラッケンミラー氏はインタビューで自身の最大ポジションがNVIDIAを売った後もAI銘柄であることには触れていない。隠したいのか、個別銘柄には言及したくないのか分からないが、とにかくNVIDIA売却後のドラッケンミラー氏のAIトレードは引き続き成功しているのである。
結論
AIブームには、まともに使えるアプリもまだ出てきていないという批判もある。だがドラッケンミラー氏は次のように述べている。
わたしが考えもしないようなアプリが出てくるだろう。
インターネットが始まった時にUberやFacebookを予想できた人がいただろうか?
具体的に何が出てくるか分からないが、その技術が使えるものか使えないものかを判断できるのが投資家である。
そしてその判断が正しければ利益を得られ、間違っていればお金を失う。
それが金融市場である。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
だからAIには非常に強気だ。
AIについては以下の記事も参考にしてもらいたい。Coherentと同時に紹介した銘柄である。