引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを長年運用したことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のノルウェー銀行によるインタビューである。
今回はFed(連邦準備制度)の金融政策について語っている部分を紹介したい。
中央銀行が間違いを犯す理由
ドラッケンミラー氏は多くの場合Fed(連邦準備制度)の金融政策に批判的である。例えば2021年、既に上がり始めていたインフレをパウエル議長が「インフレは一時的」と無根拠に断定して無視していた時期に、ドラッケンミラー氏はパウエル氏を批判していた。
だがドラッケンミラー氏によれば、パウエル議長の一番の過ちはインフレの予想を間違えたことではない。予想を間違え、それが2021年後半には明らかだったにもかかわらず、その間違った予想に固執したことである。
ジェフリー・ガンドラック氏の強烈な批判が思い出される。
何故中央銀行はそうなってしまうのか。ドラッケンミラー氏によれば、その原因は経済や金利の先行きを中央銀行が事前に表明しておくフォワード・ガイダンスにある。
ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
ある友人がFedの金融政策はデータ次第ではなくフォワード・ガイダンス次第だと主張していた。
フォワード・ガイダンスの問題は、自分の選択肢を狭めてしまうことだ。
フォワード・ガイダンスを出していれば、それが間違った時に中央銀行が間違ったということがはっきりしてしまう。
パウエル議長はそれを嫌い、もう少し時間が経てば自分の予想が当たるかもしれないという可能性に賭けた結果、インフレ率はその後9%まで上がっていったのである。
予想は間違う
しかしどれだけ優れた人物であっても経済予想を100%当てることはない。ジェフリー・ガンドラック氏は、自分の予想の的中率を70%程度とした上で、経済予想が60%当たればその人物は金融業界でやっていけると言っていた。
ドラッケンミラー氏は経済予想の間違いについて次のように語っている。
われわれのように金融業界に長くいる人間は、自分が間違った時には考えを変えなければならないということを知っている。
わたしは自分がよく間違うと思っている。わたしの投資実績はわたしの予想がいつも正しかったから得られたものではなく、間違った時に考えを変えられたから得られたものだ。
相場の世界には「君子豹変す」という格言がある。自分が間違ったと思ったら、間違った見解はさっさと捨てて正しい見解に移行することだ。
ドラッケンミラー氏によれば、中央銀行の問題点はそこにある。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
だが今のFedは、もし考え方を変えれば信認を失うと考えている。それは自分の手を後ろに縛っているようなものだ。