引き続き、1987年のブラックマンデーを予想したことで有名なポール・チューダー・ジョーンズ氏のCNBCによるインタビューである。
ジョーンズ氏は大統領選挙後のばら撒きによるインフレと金利上昇を懸念しているが、今回はその状況をどうトレードするかを語っている部分を紹介したい。
アメリカ大統領選挙とインフレ
アメリカ大統領選挙が11月5日に迫っている。大統領選挙後のばら撒きによるインフレ再燃を今や複数の著名投資家が懸念しているが、それを早くも今年の始めに懸念した最初の人物こそがジョーンズ氏だった。
そして既に行動に移している投資家もいる。例えばスタンレー・ドラッケンミラー氏である。
ではジョーンズ氏のポジションはどうなのかと司会者に聞かれ、ジョーンズ氏は次のように答えている。
正直に言えばわたしもそうしている。一番の理由は支持率の動向だ。明らかにトランプ氏が勝つ方向に動いている。
それはつまりインフレトレードを増やしたということだ。
インフレ予想でゴールド買い
具体的にはどういうトレードをしているのか。ジョーンズ氏は次のように続けている。
ゴールドを買っている。ビットコインを買っている。コモディティ銘柄は馬鹿げているほど安い。だからコモディティを買っている。
まずゴールドはコロナ以後上がり続けている。金利低下・インフレ加速で上昇する金価格が、最近のインフレ減速の局面でも上がっていることは驚異的である。
その理由については以下の記事を参考にしてもらいたい。
だが他の銘柄も見れば分かるが、これは大統領選挙後のばら撒きを懸念する金融市場の動きの一部である。
ビットコイン
例えばジョーンズ氏も推しているビットコインも史上最高値に近づいている。
ドラッケンミラー氏も次のように言っていたことを思い出したい。
金融政策が引き締め的である様子は何処にも見られない。暗号通貨は狂ったように上がっている。
コモディティ市場
また、ジョーンズ氏は金属や農作物、エネルギー資源などのコモディティ銘柄を推している。ゴールドも当然コモディティなのだが、それ以外ということだろう。
「馬鹿げているほど安い」と言っているので、農作物のことかもしれない。例えば小麦価格の長期チャートは次のようになっている。
インフレの時代には農作物の価格も上がるのだが、貴金属のパフォーマンスが一番良いことは以下の記事で検証している。
だが農作物には長期的に見てもかなりの割安水準であるというアドバンテージがある。
これまでの記事で筆者も奨めておいたが、ジョーンズ氏やドラッケンミラー氏のようにインフレ再燃を予想するのであれば、ドルや円を保有するよりは良い資産の逃避先になるのではないか。
インフレでハイテク株買い
そして最後に、筆者にとって意外だったのがジョーンズ氏の次のコメントである。
若い人々の多くはNasdaqをインフレヘッジに考えるかもしれない。それも良いだろう。ゴールド、ビットコイン、コモディティ、Nasdaqの組み合わせが良いかもしれない。
ジョーンズ氏はハイテク株をインフレヘッジとして推している。高成長の株は金利の上昇に弱く、2022年の金利上昇による株安でも一番下落したのがハイテク株であり、あのNVIDIAもかなり下げた。(そこが買い場だったのだが。)
それでもハイテク株を推すというのは、ジョーンズ氏は2016年のトランプ相場のように金利上昇と株高の組み合わせを予想しているのだろうか。あるいは他のポジションとのバランスを取るため(好景気のシナリオでも利益を得るため)なのだろうか。
債券と現金はゴミ
ちなみにジョーンズ氏は絶対に持ちたくないものとして次のものを挙げている。
そして債券はゼロだ。現金を持つとしても非常に限られた期間だけだ。
実際、ジョーンズ氏は米国債は空売りすべきだという。
ジョーンズ氏は次のように纏めている。
すべての道はインフレに通じている。
結局、先進国は最終的に債務が膨張しインフレになって終わるというのは、レイ・ダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で検証した歴史的事実であり、ジョーンズ氏もその予想は揺るぎないと考えているようである。
世界秩序の変化に対処するための原則