1987年のブラックマンデーを予想したことで有名なポール・チューダー・ジョーンズ氏がCNBCのインタビューで来月に近づいているアメリカ大統領選挙とアメリカの金利見通しについて語っている。
アメリカ大統領選挙
アメリカ大統領選挙が近づいている。米国時間の11月5日で、つまり2週間後に迫っている。
トランプ前大統領とハリス副大統領がチップに対する非課税などあらゆる有権者買収策を表明する一方で、ジョーンズ氏などの機関投資家は財政赤字拡大とその結果の金利上昇を懸念している。
ジョーンズ氏は次のように語っている。
われわれは今アメリカの歴史の中で非常に重要な瞬間にいる。要するに政府債務の見通しについて言っているのだ。
米国の政府債務は25年足らずでGDPの40%からほとんど100%まで増加した。25年で60%の増加だ。
議会予算局は政府債務は今後10年で98%から124%に増加すると言っている。これは非常に保守的な推計だ。
30年に増やせば政府債務は200%になる。
これは絶対に永遠には続かない。
今年に入り、多くの著名投資家がアメリカの政府債務について警鐘を鳴らしている。
政府の借金はこれまでも増え続けていたのだが、何故今になって大騒ぎしているのかと言えば、現金給付によるインフレのために金利が上昇し、これまでほとんどゼロ金利だった国債に多額の利払いが発生しているからである。
米国政府の利払い費用(GDP比)は次のようになっている。
それでアメリカは国債の利払いを国債発行で返済する自転車操業に追い込まれているのである。それが多くの著名投資家を心配させている。
トランプ氏とハリス氏
レイ・ダリオ氏などはアメリカの財政は5年もたないと予想しているが、ジョーンズ氏はもっと早いタイムフレームを予想している。つまりは来月の大統領選挙が危機の引き金になると考えているのである。
ジョーンズ氏はトランプ氏と、現職のバイデン氏を引き継ぐハリス氏について次のように述べている。
トランプ政権が始まった2016年に財政赤字は3%だった。2019年には5%近くまで増えていた。コロナ前の話だ。
そしてバイデン大統領がやってきてトランプ氏がやっていたことを見、インフレ再燃法でそれを更に酷くしたことで今の状況がある。
トランプ氏とハリス氏は恐らく大統領の仕事にもっとも向かない2人の候補だ。
両候補とも、著名投資家が一斉に警鐘を鳴らしている債務問題について、真剣に考えている気配はない。
ジョーンズ氏はアメリカの債務問題の今の状況について次のように述べている。
崖を歩いているヤギを見たことがあるか?
大統領選挙後の金融市場
ジョーンズ氏は次のように続ける。
両候補があらゆる減税や政府支出を約束している。チップから何から何まで減税される。2人の公約は狂気の沙汰だ。
トランプ氏なら財政赤字は年間5,000億ドル増加する。ハリス氏ならそれよりも更に6,000億ドル増える。
では、大統領がどちらかに決まった時、何が起きるのか? ジョーンズ氏はこれらの政策はそもそも実行されないと予想している。ジョーンズ氏は次のように予想している。
これらの政策がすべて実行される可能性はゼロだ。
国債市場はそれを許容しない。
実際にはこうなるだろう。どちらかが勝つ。公約した減税を行なう。国債価格が暴落して、金融市場が大統領に政策撤回を迫る。
それはつまり、イギリスでばら撒き政策によりポンドと英国債を暴落させ、2ヶ月ほどで辞任させられたトラス元首相と同じ運命である。
奇しくもジョニー・ヘイコック氏が最近、トラス元首相を例に出して国債暴落の可能性を仄めかしていた。
投資家であるジョーンズ氏はどうするのか。答えは簡単である。ジョーンズ氏は次のように述べている。
わたしは間違いなく債券を一切保有しないだろうし、長期債を空売りするだろう。債券価格は完全に間違っているからだ。
スタンレー・ドラッケンミラー氏と同じトレードを選んだようである。ドラッケンミラー氏の相場観は以下の記事で説明している。