ドラッケンミラー氏、AI銘柄のNVIDIAを株価6倍で売ったことを後悔する

引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のBloombergによるインタビューである。

今回はAI銘柄の筆頭として世界から注目されているNVIDIAについて語っている部分を紹介したい。

AI銘柄NVIDIA

NVIDIAは、AIや暗号通貨の複雑な計算に使われるGPUを製造している会社であり、AI銘柄の筆頭として株式市場で株価が暴騰して有名になっている。

そしてドラッケンミラー氏はこのNVIDIAをかなり初期から買い推奨していた。

ドラッケンミラー氏がNVIDIAを買った2年前からNVIDIAの株価がどうなったかと言えば、チャートは次のようになっている。

この株を2023年から持ち続けていたドラッケンミラー氏は、次のように述べている。

投資家としてのキャリアのなかで、わたしは多くのミスを犯してきた。その1つはすべてのNVIDIAの株式を800ドルから950ドルで売ってしまったことだ。

株価は今では1,300ドル辺りまで上がっている。

NVIDIAは株式分割しているので、今の株価で言えば80ドルから95ドルで売ったということになる。これについては以前報じておいた。

当時は一部売却とのことだったが、今回のインタビューによれば結局全株売ったらしい。

その理由についてはドラッケンミラー氏は次のように述べている。

18ヶ月前には自分はNVIDIAを何年も持ち続けると考えていた。その時株価は300ドル(訳注:今の株価では30ドル)くらいだった。

同時に、以前のインタビューで自分はウォーレン・バフェット氏のように永遠に持ち続けるわけではないとも言った。

状況が変わったのは、株価が1年で3倍になったことだ。割高になったと思った。

それでもポートフォリオの中で一番金額が大きかった銘柄が6倍になったという話なのだが、ドラッケンミラー氏は謙虚にも次のように続けている。

AIの長期的な見通しを信じている。

NVIDIAは本当に素晴らしい会社で、株価が下がってくればまた買うだろうが、今のところは早過ぎた利確による自分の傷を舐めている。

ドラッケンミラー氏のAIトレード

ドラッケンミラー氏は利確のタイミングを間違えたのだろうか? ここからが本番なのだが、ここの読者であればそうではないことを知っているはずである。

インタビューの司会者は注目せずに流しているが、ドラッケンミラー氏はぼそっと次のようにも言っている。

他のやり方でもAIに賭けている。特にAIの電力需要を支えるために作られたインフラなどだ。

実際には、ドラッケンミラー氏はAIトレードを利確したのではなく、NVIDIAより条件が良いAI銘柄が見つかったのでそちらに乗り換えたのである。

それは例えば、現在ドラッケンミラー氏の最大ポジションであるCoherentである。

Coherentは、AIに対応しているデータセンターで、AIの高速処理に対応するために使われている、光ファイバーの中を通る光信号をデジタルデータに変換する光トランシーバーを製造している企業である。

AI需要でNVIDIA並みの売上高成長率が予想されているものの、株価が一般企業並みの割安水準だとして、業界2位のLumentumも含めて筆者も買い推奨をしておいた。

その後Coherentの株価はその後どうなったか? 株価チャートは次のようになっている。

結論

ちなみに2026年のアナリスト予想に基づけば、NVIDIAは利益成長率43%で株価収益率35倍、Coherentは利益成長率47%で株価収益率23倍となっている。

Coherentは今でも安いのだが、筆者が推奨した段階ではCoherentはこれよりも断然安かったわけである。去年NVIDIAの時にも言ったが、上がらないわけがあろうか。

それがドラッケンミラー氏がNVIDIAから乗り換えた理由だろう。その戦略は今のところ奏功している。

今回気になるのは、ドラッケンミラー氏がAIへの電力供給に言及していることである。Microsoftと電力供給の契約を結んだスリーマイル島の原発のことだろうか?

来月には機関投資家のポジションを開示するForm 13Fが更新されるので、ドラッケンミラー氏のポジションもまた変わっているかもしれない。著名投資家の投資戦略を引き続き報じてゆくので、楽しみにしていてもらいたい。