ドラッケンミラー氏: 大統領選挙後に金利が上昇して株価に悪影響を与える可能性

引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のBloombergによるインタビューである。

今回は11月に迫るアメリカ大統領選挙とその後の金融市場について語っている部分を取り上げたい。

アメリカ大統領選挙

アメリカ大統領選挙が2週間後に迫っている。これまでの米国経済は緩やかな減速が続き、金利や株価もそれに沿って動いてきたが、選挙後には新大統領の政策を織り込んでゆくことになる。

だから世界中の投資家が当然ながらアメリカ大統領選挙に注目している。

大統領選挙では、大統領が選出されるとともに上院と下院の両方の勝者も決まる。つまり大統領と議会、それぞれどちらの党が勝つか4通りのシナリオが考えられるわけだが、それぞれのシナリオについてドラッケンミラー氏は次のように語っている。

民主党が大統領と議会の両方を得る可能性は極めて低いと思う。ハリス氏が大統領になる場合でも、州ごとの支持率を見れば、上院で勝つのは共和党になりそうだ。

だが仮にそうなった場合は増税と企業の意欲衰退、規制は今のまま、株式市場にとっては3〜6ヶ月ほど厳しい時期になるだろう。

それは実体経済にも影響を与えるだろう。株式は今や金融資産の25%を占めている。史上最高水準で、少し前までは15%だった。

それが民主党が両取りする場合だ。だが、幸か不幸かはあなたの見方次第だろうが、その可能性は非常に低い。

ドラッケンミラー氏は民主党が圧勝した場合株価は下落と踏んでいるようである。それは現在の景気減速シナリオの継続ということになるかもしれない。

そしてアメリカ経済が景気後退になるならば、株価がどうなるかについては以下の記事で解説しておいた。

トランプ氏勝利の場合

次はトランプ氏が勝った場合だが、そのシナリオについてはドラッケンミラー氏は次のように述べている。

共和党が大統領と議会の両方を得る可能性は、トランプ氏が勝利して議会が民主党になる可能性より高いだろう。何故ならば、トランプ氏に投票する人は議会だけ民主党にしようとは考えないだろうからだ。

共和党支持者の中には議会だけは共和党にして大統領はトランプ氏にしないと考える人はいるかもしれないが、逆はいないだろうという推測である。

では共和党が圧勝すればどうなるか。ドラッケンミラー氏は次のように続けている。

共和党が両取りすれば、企業の意欲は増し、規制緩和もある。

アメリカ経済は3〜6ヶ月ほど底上げされるだろう。だがわたしの懸念はそれが理由で債券市場の市況が悪化することだ。金利は既にきちんとした経済見通しを反映していない。そしてそれが株価の上昇をかき消してしまう可能性がある。

ドラッケンミラー氏はトランプ氏勝利ならビジネスにとって有利な環境を予想している。2016年にもトランプ氏勝利のあとには株高・金利上昇という好景気相場が来た。

今回は、既に下げてしまった法人税をこれ以上下げることが難しいなどの理由で、2016年よりも出来ることは限られてはいる。だからトランプ氏はチップへの非課税などマイナーな減税を乱れ打っているわけである。

だがトランプ氏の政策はやはり実体経済を押し上げる方向には働くだろう。

金利上昇は株価を下落させるか

しかし2016年と状況が違うことが1点ある。コロナ後にインフレが起こり、金利が上昇、莫大な政府債務に利払いが発生していることである。

2016年は元々低金利だったので、多少金利が上がっても問題はなかった。しかし現状では金利は既に4%であり、ここから上がってゆくようなことになれば、国債の利払いを国債発行で返済している今の米国政府の自転車操業が加速してしまう。

それで米国債を心配している著名投資家が増えているのである。

トランプ氏の景気対策は株価にとってプラスだが、金利上昇は株価にとってマイナスである。2016年には金利上昇は株式市場にとって問題にならなかったが、今回はそうではないかもしれない。

少なくとも1〜2年は問題にならない可能性もある。米国債の問題が表出するまでの期間については著名投資家でも意見が割れている。

金利上昇は株価にとって問題ないのか。この状況で投資家はどうすれば良いのか。

優れた投資家ならば、この状況で取るべき戦略は明らかではないか。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

われわれのオフィスでは債券市場の心配をしているのだから、株式市場ではなく債券市場でトレードしている。

株式市場はプラス要素とマイナス要素がある。債券市場では金利上昇側の要因が勝っている。

ドラッケンミラー氏はそう判断しているのだから、彼はあらゆる側面から自分に有利な市場でのみトレードすれば良いのである。だからドラッケンミラー氏は米国債を空売りし、金利上昇に賭けている。

投資家はトレードする市場を選べるという特権を最大限利用する必要がある。

ちなみに米国経済がこのまま減速すると考えている債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏も似たトレードを行なっている。そちらも参考にしてもらいたい。