レイ・ダリオ氏が中国の不動産バブル崩壊を説明する

引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏のBloombergによるインタビューである。

今回は金融市場で今話題の中国の不動産バブル崩壊について語っている部分を紹介したい。

中国株の反発

日本の個人投資家にはあまり知られていないかもしれないが、金融市場では今中国市場が話題である。何故ならば、巨大不動産バブルの崩壊で3年も下落相場だった中国株が急騰しているからである。

上海総合指数のチャートは次のようになっている。

中国の不動産バブル崩壊

何故中国株は急上昇しているのか。そもそも何故3年も下がっていたのか。ダリオ氏は次のように説明している。

中国には多額の負債があるが、その負債は省のものだ。各省は負債を増やし不動産を売ることでお金を稼いでいたが、それはもう出来ない。

中国のバブル崩壊は長年上がり続けてきた不動産市場の崩壊なのだが、その主役は地方政府である。

ジョージ・ソロス氏が2022年に次のように説明していたことを思い出したい。

中国の不動産ブームは地方政府を利するために国民に貯蓄を不動産に投資させる持続不可能なモデルに基づいていた。

地方政府、つまりは中国では省だが、国民に不動産投資をさせると何故地方政府を利することになるのか。

それは不動産の元々の持ち主が地方政府だからである。私有財産を嫌う共産主義を標榜する中国では、基本的に土地は政府のものである。

地方政府にとっては、不動産価格が上がると土地は高く売れることになる。またGDPが上がれば共産党内部での発言力も上がる。

だから中国の各省は債務を増やして自ら不動産開発を行い、それを国民に買わせて不動産価格をどんどん上げて行ったのである。

バブル崩壊の後始末

だが、中国の不動産バブルは結局は地方政府の自作自演なので、永遠に続くことはあり得なかった。巨大ディベロッパーの恒大集団が2021年に実質破綻したことを契機に、中国の不動産バブルは崩壊し、中央政府には巨額の借金だけが残った。

中国にとって一番の問題は、この残された債務をどうするかである。ダリオ氏は次のように述べている。

だから中国はこれらの省に資金を供給しなければならない。それはすぐに行われるだろう。

これは地方政府の債務を中央政府が肩代わりすることを意味している。

実際、中国政府は最近GDPの1.5%に相当する新規の国債発行を発表した。そしてその後、藍仏安財政相は「中国にはまだ債務を発行する余地が十分ある」として、政府債務を増加させる意向を発表した。

これは要するにバブルの原因となっている地方政府の債務を一旦中央政府が肩代わりするということである。

ダリオ氏は次のように述べている。

同じようなことは過去に何度もあった。アメリカでは4回、世界でも何度も行われてきた。

アメリカでは例えばリーマンショックの後にそれが行われた。政府は債務を増やし、その代わりに家計の債務は減少していった。アメリカの政府債務と家計債務(GDP比)のチャートは次のようになっている。

結論

要するに、中国でも同じことを行なうということなのである。

ダリオ氏はそれに加えて低金利政策を推奨している。

そして金利を名目経済成長率より低くし、実質金利を下げ、現金を抱え込むインセンティブをなくすような金融政策が必要だ。現状では誰もが現金を抱え込んだままなので、何をしてものれんに腕押しになる。

これは要するにアメリカがリーマンショック後に行なった対処法である。政府は債務があっても定義上はデフォルトしないので、債務負担が軽くなった他の部門は経済を再開させ、形の上では経済成長が戻り、株価も回復するということである。

それが結局長期的にどうなるかと言えば、アメリカの政府債務はどんどん膨らみ、インフレを引き起こし、巨額の債務に今では大きな利払いが発生して、著名投資家が債務危機を心配する状況へと発展している。

あるいはアベノミクス以後の日本と同じ状況である。その結果は急激な円安による輸入物価上昇という結果に終わっている。

だがそれらの共通点は、それまで株価が上がっているということである。中国が本当に日米のようになるのであれば、現在の株高は反応として正しいということになる。

中国はそのまま日米の後を追うのだろうか。中国市場は今世界中に注目されている。