ガンドラック氏: トランプ前大統領が再選ならウクライナ戦争は終結へ、米民主党は戦争の党

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のUBSによるインタビューである。今回は11月のアメリカ大統領選挙とロシア・ウクライナ戦争について語っている部分を紹介したい。

アメリカ大統領選挙

前回の記事でガンドラック氏は、大統領選挙に出馬しているトランプ前大統領とハリス副大統領の両方がアメリカの財政問題を軽視していると言い、その状況を踏まえた上で一番的確な投資戦略を提案していた。

どちらの候補もばら撒きを行ないたいと思っているので、程度の差はあれ財政赤字拡大という路線は変わらないように見える。

トランプ氏とハリス氏の違い

では、トランプ氏とハリス氏の違いは何処にあるのだろうか。ガンドラック氏は次のように述べている。

両候補の大きな違いは地政学の面にある。

トランプ氏は就任1日目にウクライナ戦争を終わらせると言っている。1日目にそうなるかは分からないが、トランプ氏はアメリカをウクライナ戦争から引き離すだろう。

トランプ氏は常々バイデン政権下でウクライナとパレスチナという2つの戦争が勃発していることを批判してきた。そして自分が大統領であったならば2つの戦争は両方とも起きなかっただろうと主張した。

トランプ氏は最近次のように述べている。

バイデン氏は間違ったすべてのことを言っている。その内の1つはウクライナがNATOに加盟すると言ったことだ。

それを聞いた時、バイデン氏は戦争でも始めるつもりかと思った。

実際、ウクライナ情勢はトランプ政権の4年間だけ悪化が止まっている。そしてそれは偶然ではない。何故ならば、バイデン氏は大統領になる前からウクライナに深く関わっており、それがウクライナ情勢を常に悪化し続けてきたからである。

バイデン氏とウクライナ

2022年のロシアの侵攻よりも前のウクライナ情勢悪化と言えば、2014年のマイダン革命である。この頃アメリカは民主党のオバマ政権であり、バイデン氏は副大統領だった。

マイダン革命は元々ウクライナに存在した親露政権がアメリカとEUの支援する暴力デモ隊によって追い出された事件で、アメリカの外交官ビクトリア・ヌーランド氏が親露政権を追い出した後のウクライナの新政権に誰が入るべきかを議論している録音がYoutubeに暴露されている(デマだと思うならばヌーランド氏の名前で検索してみるといい)。

ロシアからすれば自国に敵意のあるアメリカの息のかかった政権が隣国に誕生するのだから、たまったものではない。それが情勢悪化の原因なのである。

そしてこのヌーランド氏はトランプ政権の2017年から2020年まで政権から排除されたが、2021年のバイデン政権において国務次官に返り咲いている。そして2022年のウクライナ戦争である。

バイデン氏自身も個人的な理由でウクライナの検事総長を解任するなど、かなり前からウクライナを好きなようにしていたのである。解任された検事総長は次のように述べていた。

当時バイデンは副大統領で、わたしを解任するまでウクライナへの10億ドルの補助金は渡さないと脅していた。

トランプ氏が2016年に大統領に当選した後に演説で「アメリカは他国の政権転覆をやめる」と主張したのにはそういう背景があるのである。そしてトランプ氏はその公約をある程度果たした。

戦争とアメリカ民主党

はっきり言えば、ウクライナ情勢が悪化したのはヌーランド氏などのアメリカの政治家がウクライナを対ロシア用の尖兵にしようとして、政権をひっくり返してまでウクライナを反ロシアの国に仕立て上げたからである。

アメリカ人でも共和党の支持者たちはウクライナのこうした状況にうんざりしており、共和党の反対でウクライナ支援の予算が議会を通らないなど、状況は複雑化している。

ガンドラック氏は次のように述べている。

ウクライナの状況は膠着状態に見える。ただただアメリカ人のお金が消えている。

中国と台湾

また、ガンドラック氏は台湾情勢についても次のように言っている。

台湾と中国も心配だ。中国経済がこのままデフレに苦しみ続ければ、それは外交において攻撃的な姿勢に繋がる可能性がある。

1980年代にロシアがアフガニスタンに侵攻した時のことを思い出したい。それはロシアの強さの証明ではなく、弱体化の兆候だった。

国家は経済的に窮乏する時に戦争を起こしやすくなる。それは覇権国家の隆盛と衰退を分析したレイ・ダリオ氏の『世界秩序の変化に対処するための原則』の主張と同じである。

それがトランプ氏とハリス氏でどういう差が生まれるか。台湾と言えば、民主党は台湾情勢が悪化することを承知の上で、アメリカの下院議長という立場で台湾を訪問したナンシー・ペロシ氏の党である。

台湾はペロシ氏のパフォーマンスに反発した中国の軍艦に即座に囲まれることとなったが、ペロシ氏はそれを気にすることもなく軍艦に囲まれた台湾を見捨てて颯爽とアメリカに帰っていった。トランプ氏はそれを猛烈に批判していた。

結論

日本人は完全に勘違いしているが、アメリカ民主党のこうした行動は相手の国のことを考えてのことではない。ヌーランド氏やペロシ氏の行動がどのようにウクライナと台湾のためになったというのか。

ガンドラック氏は次のように述べている。

民主党は戦争の党であるように見える。バイデン政権下でアメリカは2つの戦争に巻き込まれている。両候補の違いはそこにある。

ちなみにこの件で思い出したのが、最近自民党の総裁選に敗れた高市早苗氏である。高市氏はアメリカとの核共有を公約にしていた。

今の日本が核を持つならば、その狙いは中国とロシアである。2022年のロシアのウクライナ侵攻直前にゼレンスキー大統領のミュンヘン会議での発言を知っている人ならば、高市氏の発言を聞いて即座にそれを思い出しただろう。

アメリカ民主党にそそのかされたゼレンスキー氏はミュンヘン会議で対ロシア用の核兵器の保有をちらつかせたのである。それがロシアのウクライナ侵攻の直接の原因である。高市氏はまさにそれを作ろうとしたわけである。

それで日本がロシアと戦争になったとしても、アメリカは絶対に表に出てこない。他国に戦わせることが戦後のアメリカの戦争戦略だからである。

何故アメリカが自分の代わりに自国民を犠牲にして戦ってくれると思っているのか? 実際にウクライナでそうなっていないではないか。何故日本がもう一度同じことをやる必要があるのか? アメリカは自分でロシアと闘いたくないから、他国に戦わせるのである。

高市早苗氏が表に出てくるようなことになれば日本は完全にウクライナの二の舞だった。自民党の総裁選には興味がないが、それだけは本当に良かったと思う。


世界秩序の変化に対処するための原則