9月27日、自民党の総裁選で石破茂氏が選出された。高市早苗氏や小泉進次郎氏を破っての選出となった。
石破氏の前評判を考えれば当然のこととも言えるが、石破氏の勝利が伝えられると金融市場では日経平均先物が大きく下がった。
石破総裁誕生
総裁選は初回投票で誰も過半数を獲得しなかったので、得票数の上位2名で決選投票が行われたが、初回に石破氏と高市氏と小泉氏で票が割れた時点で石破氏の勝利が決まったと言える。
決選投票は石破氏と高市氏の一騎打ちになったが、それはつまり小泉氏に投票した議員がどちらに入れるかで勝負が決まる状態だったということである。小泉氏を支援していた菅元首相は石破氏との協力を示唆していたので、小泉氏の票が流れて石破氏になったのだろう。
さて、決選投票の結果が分かった時点で株式市場はもう閉まっていたが、動いていた日経平均先物が急落した。
下げ幅2,410円、下落率6.1%と1日にしてはなかなかの暴落である。
日経平均下落の理由
何故そうなったのか。日本株に投資している人には石破氏の政策について知っている人も多いだろう。
石破氏の政策の中には防衛に関するものなど色々あるが、金融市場に一番影響が大きいのは法人増税と金融所得増税である。
それだけ聞けば知識のある投資家ならば何故こうなったかが分かるだろう。それは両方株主の利害に直結する政策だからである。
まず石破氏は法人税の増税を掲げているが、法人税とは法人の利益に対してかかる税金である。
一方で、株主は株式会社の保有者のことを言うので、会社の利益とは株主の取り分である。だから会社の利益に対して増税が行われると株主の取り分が減り、株価が下落する。
もう1つの方の金融所得課税は、株主の利益に対する直接の課税である。株式の値上がりや配当に対する増税で、株価が下がるのも当然だろう。
下落余地はあるか?
さて、投資家が知りたいのは6%の下落が下がり過ぎなのか、それとも下落余地はもっとあるのかということだろう。
それを知るには実際には株主にとってどれだけの損になるのかを考える必要がある。
石破氏は法人税をどれぐらい増税したいのかをまだ明確にしていないので、それを厳密に計ることはできない。だが例えば10%の増税なら企業利益は基本的には10%以上減ることになるので、株価も10%以上下落すべきだろう。
日本の法人税は現在29.7%となっている。会計上の仕組みや益金不算入などによって、この名目上の数字を仮に10%上げたとしても実効税率は10%も上がらないのだが、株式の下落幅はおよそ5〜10%程度だと想定して良いだろう。
石破氏はこれに加えて金融所得への増税を主張している。具体的には所得が1億円を越える分への増税を目指しているそうだが、現在株式譲渡所得への税率は約20%である。
石破氏が目指すのは株式譲渡所得で生きている富裕層への増税であり、これを所得税と同じ累進課税にしたいのだろうから、富裕層に対しては20%の税率を40%や50%にしたいのだろう。
これは一部の株主に対しての増税にはなるが、こちらも全体で株主の利益が5〜15%程度減少してもおかしくはないだろう。また、自民党が新たな増税を発明して、それがより幅広い層に広がらないという根拠はまったくない。
結論
ということで、概算ではあるが株主に対する石破氏のダブル増税が実現されれば合計で株価は10%から最大で25%下がってもおかしくない。厳密にどれだけ下落するかは石破氏の発表する詳細による。
実際の株価の推移は、政策が完全に実現した時の下落幅に対し、政策がどれだけ実現しそうかの確率を掛けたものが市場を牽引することになる。
石破氏は早期の解散を主張していて、もしかしたら年内の解散総選挙もあるかもしれない。石破氏が増税を選挙前に行わないのであれば、自民党が選挙に負ければ増税は行われない可能性もある。
その辺りも含めて株式市場は判断するだろうが、6%という今の下げ幅は石破氏の政策に対して比較的控えめな下げ幅だというのが筆者の感想である。
また、金融緩和を支持する高市氏が負けたので、日銀植田総裁の金融緩和解除は続くことになる。