引き続き、CNBCによるジョン・ポールソン氏のインタビューである。今回は金相場について語っている部分を紹介したい。
アメリカ大統領選挙
前回の記事では、ポールソン氏はアメリカ大統領選挙でハリス氏が勝てば、ハリス氏の増税が株式市場を下落させるだろうと予想していた。
もし株価が下がるとすれば、投資家はポートフォリオをどうすれば良いのか。ポールソン氏は次のように言っている。
ハリス氏が勝てば、現金の保有を増やすだろう。そしてゴールドに投資し続けるだろう。
コロナ後の現金給付でインフレが発生して以来、ポールソン氏は長らくゴールドを推している。
そしてポールソン氏の予想通り、ゴールドはここ数年好調である。
金相場とアメリカの金利
ゴールドは何故上がっているのか。ドル建て金価格は一般にアメリカの金利と逆に動く。金利が高ければ投資家はドルを保有しようとし、金利が低ければドル保有のインセンティブが下がりゴールドに有利となる。
では、ここ数年金価格が上がっているなら、ここ数年金利は下がり続けているのかと思えば、そうではない。金価格に影響を与えるアメリカの期待実質金利は次のように推移している。
現在、金利は2023年前半と同じ水準である。では金価格もそうかと言えば、金価格の方は2023年前半の水準を大きく上回っている。
金価格上昇の理由
では金相場はどうして上がっているのか。金価格が上がるもう1つの理由はインフレだが、今はむしろインフレ率が下落するというのが市場のトレンドである。
では金価格上昇の原因は何なのか。ポールソン氏は次のように述べている。
金価格が上がっている理由は世界的な紙幣への不信感だ。特に中央銀行がそう考えている。中央銀行たちは外貨準備を不換紙幣からゴールドへと移している。
それがゴールドの需要を押し上げ、金価格を押し上げている。
結論
ポールソン氏は世界的な紙幣からの逃避が金価格を押し上げていると考えている。実際、BRICSや中東諸国などの国々は外貨準備としてドルの保有を減らし、ゴールドの保有を増やしている。
政府債務の膨張と紙幣印刷により、基軸通貨がその地位を徐々に失ってゆくというのは、世界最大のヘッジファンドを創業したレイ・ダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で述べているシナリオである。
少なくとも、大英帝国やオランダ海上帝国などの過去の覇権国家の通貨はそうなってきた。そしてダリオ氏によれば、アメリカも長期的にはその運命から逃れられない。
金価格はこれからも上がり続けるのだろうか。ポールソン氏はそう聞かれて次のように答えている。
イエスだ。そう思う。
世界秩序の変化に対処するための原則