ガンドラック氏: アメリカの住宅価格高騰はリーマンショック前に似ている

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がアメリカのインフレと不動産市場について語っている。

アメリカの住宅インフレ

コロナ後の現金給付による物価高騰のあと、アメリカのインフレ率は2%台まで下がってきた。

だがいくつか懸念はある。まず賃金インフレが収まっていないため、賃金を主なコストとするサービスのインフレ率がまだ高いこと、そして住宅価格が高いままであることである。

ガンドラック氏は次のように語っている。

住宅価格は急上昇し、しかも今でも止まっていない。

マンハッタンや、驚くべきことにロサンゼルスなどの場所でも、過去12ヶ月でおよそ8%も上昇している。

ガンドラック氏はコロナ後の物価高騰を予想的中させた後、インフレ率は下がると一貫して言い続けている投資家である。

だが住宅価格はガンドラック氏の言う通りに動いていない数少ない指標の1つである。

好調の住宅市場と個人消費

アメリカの住宅価格が高止まりしているのは、失業率が景気後退直前の水準であるにもかかわらずアメリカでは消費が強いことと関係している。消費も住宅も消費者がお金を払うからである。

そして実際、消費は本来あるべき強さ以上に強い。ガンドラック氏の盟友デイヴィッド・ローゼンバーグ氏が次のように指摘していたことを思い出したい。

消費が期待を上回っていることは間違いない。

だがそこには矛盾がある。税引き後の実質可処分個人所得は過去1年で1%の増加だが、実質個人消費はほとんど3%増加している。

ここから分かるのは、貯蓄率が継続的に下落しているということだ。

アメリカの消費者は貯蓄を切り崩して消費をしている。アメリカの消費者は無理をしている。そしてそれは住宅購入においても同じことである。

住宅価格と可処分所得

そこでガンドラック氏が持ち出しているのが住宅価格と可処分所得の比較である。ガンドラック氏は次のように説明している。

消費者が感じている問題は、可処分所得が住宅価格の上昇にまったく追いついていないことだ。

コロナ後、特に現金給付によってアメリカ人の所得は上がったが、ガンドラック氏は住宅価格がそれ以上に上がっていることを指摘している。

アメリカの住宅価格と可処分所得を並べると次のようになっている。

コロナ以後、住宅価格の上昇が可処分所得の上昇を大きく上回っていることが分かる。市場において価格は需要と供給で決まるが、例えば香港などのように土地が限られる地域ならまだしも、アメリカには土地は有り余っている。

だから供給の問題はなく、長期的に住宅価格を決定するのは需要、つまり消費者の所得である。

だから住宅価格が所得を上回って上昇するような状況は、長らくは続かない。それは上のグラフで住宅バブルが崩壊したリーマンショックの2008年前後を見れば分かる。

リーマンショック前まで所得を上回って推移していた住宅価格は、2008年のバブル崩壊後は何年も所得を下回って推移している。それまでの価格上昇が行き過ぎていたので、バブル崩壊後にその帳尻を合わせなければならなくなったのである。

結論

そして今ふたたびアメリカの住宅価格は所得の伸びを上回って推移している。ガンドラック氏は次のように述べている。

はっきり言えば、住宅が購入できない問題は、可処分所得が住宅価格に完全に遅れを取っていた2006年のような状況になっている。

ガンドラック氏は長期的にはそれが解消されると見ている。それはつまり住宅バブルが崩壊するということである。それがもしかしたらガンドラック氏の予想するディスインフレシナリオを助けるかもしれない。

だが、上の住宅価格と所得のグラフはなかなかに衝撃的である。それだけ見れば本当にリーマンショック前と同じようなバブルだからである。