世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が自身のブログで今後10年に経済成長率が高くなる国を紹介している。
インドの経済成長
ダリオ氏はブログ記事で世界経済を俯瞰し、各国の国力について論じている。
その中には勿論経済成長に関する箇所もあり、そこでダリオ氏は次のように書いている。
経済成長の見通しについては、わたしの用いる指標によればインドが今後10年でもっとも力強い実質経済成長を実現すると予想されている(およそ6%)。
インドは実際に平均で6%から8%の経済成長を30年間続けており、これからも続くという見方なのだろう。
インドの主要株価指数SENSEXは以下のように推移している。
インド株は最近著名投資家の間でも人気があり、株価収益率は24倍と先進国並みの高さになっている。下がれば買いたいのだがそういう銘柄はなかなか下がってくれない。
ちなみに6%の経済成長が10年続けば、10年後には累計で79%の経済成長になっている。それは企業利益の伸びにも影響するだろうから、米国株のように今後の株価上昇予想にファンダメンタルズ的根拠がない銘柄とは違うのである。
インドネシア
インド株は日本でも注目されつつあるが、経済成長がアメリカや日本より高い国は他にもある。ダリオ氏が2位から5位に挙げるのが、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、中国である。
インドネシアも高成長の国であり、過去25年間で平均して4%から6%の実質経済成長を続けている。
主要な株価指数であるIDX総合指数は次のように推移している。
ちなみに株価収益率は12倍であり、インドほどの高い水準にはなっていない。経済成長率と合わせて考えればこちらの方が割安かもしれない。
また、インド株とインドネシア株を見れば分かるが、これらの株式は日本やアメリカの株式市場が不調になった8月以降のパフォーマンスが良い。
米国が利下げに動いていることもプラスに働いているのだろう。その原因はアメリカ経済の減速なのでアメリカには不利だが、インドやインドネシアは金利低下のメリットを享受している。
サウジアラビア
次にサウジアラビアだが、この国は言わずと知れた原油の国である。経済成長率は原油価格の推移に影響されるため不安定だが、ダリオ氏は年率4%台の実質経済成長率があると予想している。
主要株価指数のタダウル全株指数は次のように推移している。
こちらはやはり原油価格に連動している。株価収益率は12倍だが、国営産油企業である巨大企業サウジアラムコの株価収益率11倍に引っ張られている感がある。
分散投資対象にはなるだろうが、インドやサウジアラビアとは違う種類の銘柄であると言える。
トルコ
さて、トルコは金融業界では50%を超えるインフレの国として知られているが、株式市場はどうなっているのか。主要株価指数のBIST 100のチャートは次のようになっている。
年始からも上がっているが、トルコの株式市場は実は長期的にも上がり続けており、ここ2年で4倍以上になっている。
一方でトルコの通貨リラはインフレで暴落しているので、海外の投資家にとっては株価の上昇から通貨価値の下落を差し引かなければならないのだが、ドル建てで取引されているアメリカ上場のトルコ株ETFもなかなか悪くないパフォーマンスとなっているのである。
インフレの国でインフレ以上に株価が上がるかどうかは、インフレに対して中央銀行が政策金利をどう設定するかにかかっている。
トルコの場合はインフレほどに政策金利を上げていないので、差し引きの実質金利はマイナス金利で、株価は通貨の下落以上に上がるがインフレは止まらず、国民は高い物価に苦しむという状況になっている。
今後もトルコ株が国外の投資家にとって魅力的であるかどうか、つまり株価が通貨下落以上の上昇を見せられるかどうかは、トルコ国民が投資家の代わりに引き続き通貨下落とインフレという犠牲を強いられるかどうかにかかっている。いや、日本でもそれは笑い事ではないのだが。
中国
さて、最後に中国である。中国は不動産バブルの崩壊が2021年から続いており、今でも失業率が高止まりする状況が続いているが、ダリオ氏はそれでも今後10年で年率4%ほどの実質経済成長を予想している。
上海総合指数は今年前半に一度持ち直したが、その後また底値に落ちて行っている。
確かに中国経済の底値拾いはマクロ投資家としては惹かれるテーマなのだが、中国は経済指標が信用できないためタイミングが読みづらく、個人的には足を踏み入れられない状況となっている。
だがそれが出来る人には魅力的な投資機会だろう。投資家にとって暴落はチャンスなのである。
結論
というわけで、日本株や米国株に目を向けがちな日本の読者に向けて、それ以外の選択肢を紹介してみた。
著名投資家の間ではインドの人気は高い。
また、米国経済が過去40年の株高をもたらした低金利相場から抜け出たことで、米国の投資家たちは米国国外に目を向けている。上記5ヶ国以外にはアルゼンチン、ギリシャなどが著名投資家の興味を牽いているようである。
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ダリオ氏は著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で、アメリカや日本のような政府債務と紙幣印刷に頼る先進国はインフレと通貨安で徐々に衰退してゆくと予想している。
一方でより若い国の経済が台頭してくる。個人的にはインドネシアに興味が向いたのだが、読者はどうだろうか。
世界秩序の変化に対処するための原則