株価がまた急落している。8月の日経平均の暴落のあと株式市場は持ち直したかのように見えていたが、9月に入ってまた不安定になっている。
筆者から言わせれば、株式市場が不安定なのは当たり前である。8月初めから状況は何も変わっていないからである。
8月・9月の株価下落
最初に株価を見ていくが、まずはアメリカのS&P 500のチャートである。
最初の下落は7月から8月にかけてだった。その後株価は7月の高値近くまで戻ったが、もう一度頭を叩かれた形となっている。
日経平均はトレンドとしては米国株より悪い。チャートは次のようになっている。
株価下落の理由
さて、株式市場が理由もなくこれだけ大きく動くことはほとんどない。今回の下落にも理由がある。
その理由は、1ヶ月前にも言っておいた通り日銀の利上げではない。
そもそも日銀の利上げで米国株がどうにかなるわけがない。
実際には、株価下落の原因は実体経済にある。日本でもアメリカでも経済は減速している。それを一番象徴しているのはアメリカの失業率だろう。
最近発表された8月の雇用統計では失業率は4.2%となっている。
前月の4.3%からは一旦下がったが、上昇トレンドを継続している。
筆者は失業率の上昇を早くから警告してきた。株価の下落直前には次のように書いている。
失業率の上昇が前年との差で0.5%以上に達した場合、景気後退を逃れられたケースは戦後1度もない。
そして景気後退が来るならば、その半年ほど前に株価は下落を開始することも、以下の記事で事前に検証しておいたのである。
粘り強いインフレ
一方で、同じ雇用統計で発表された8月の平均時給は前月比年率で4.9%の上昇となり、前月の2.8%から加速した。
時給はサービス業の主なコストであり、サービスのインフレに影響する。
時給のインフレ率は長期トレンドとしては緩やかに下がってはいる。だが8月に加速したようにかなり粘り強く、何より失業率の悪化に比べて減速の速度がかなり遅い。
2016年の相場の再来
この2つのトレンドが何を意味しているかと言えば、経済は減速してもインフレはそれほどは減速しない状態、つまりスタグフレーションである。
そして株価が下落しているのは、上にも書いた通り景気後退が不可避の水準まで失業率が上がっているからである。
一方で、今年は11月にはアメリカ大統領選挙が控えている。景気が悪化している状況はドナルド・トランプ前大統領に有利である。トランプ氏は経済対策を得意としているからである。景気が悪化すればするほど、トランプ氏を求める声は強くなるだろう。
この状況は2016年の株式市場に非常に似ている。2016年にも大統領選挙前までは景気後退を懸念して株式市場が不安定になっていたが、トランプ氏が当選すると強気相場へと変わっていった。
2015年からのぐらつきが今の相場に似ている。
だから今の株式市場の状態は、日米の減速している経済を考えれば当たり前の状況である。日本の方が下落幅が大きいのも、日本経済の方が減速しているからである。
問題は大統領選挙がどうなるかである。株式市場が救われるかどうかはそこにかかっている。