原油価格の急反発リスクを米保険株買いでヘッジする

原油価格が低迷している。サブプライム・ローン危機以降、平均して100ドル前後で推移してきた原油先物は、複数のマクロ要因で急落し、米国のWTI原油先物、英国のブレント原油先物ともに60ドルを割る勢いで取引されている。

原油価格の下落は世界経済には当然プラスであり、産油国サウジアラビアの動きを見るかぎり、この傾向は当分続くだろう。しかし、原油安が米国株の上昇に織り込まれていることや、日銀の金融政策に影響を及ぼしていることを考えれば、原油先物そのものを取引していない投資家にとっても、原油価格の行く末、とりわけ急反発の可能性を考えることは重要である。

まずは原油が急落している要因を列挙しよう。

  • FRBの量的緩和終了
  • ドル高
  • 欧州、中国経済の減速懸念
  • サウジアラビアによる米国のシェールオイル産業への対抗措置

緩和終了とドル高は、似ているようだが別に考えるべきである。長年の金融緩和によって高値に保たれていた原油価格から資金が引き揚げられ、更にドル高によりコモディティ全体の相対的価値が低下している。これらの要因に、米国のシェール産業を赤字に追い込もうとするサウジアラビアが原油の減産を拒否したことが加わり、原油安を加速させている。

米国のシェール産業の採算分岐点は60ドル前後と言われており、現在の価格はその節目であると言える。この水準が底だと考えている投資家も一定数居るようだから、ここを明確に割った段階で下げが加速する可能性がある。このように、大きなマクロ要因が複数重なった場合、投資家が考える底値が底値となる可能性は薄い。そういった投資家の投げがすべて出た段階こそが底値であるからである。

したがって原油安はもうしばらく続くと思われる。ガソリン価格の低下による米国の個人消費の伸びに賭けるのも、インフレ率の低下による日銀の緩和継続に賭けるのも良いだろう。しかし、サウジアラビアのひと声で反転しかねないトレンドに全力を注ぐのは賢明ではない。とはいえ、原油先物やエネルギー株そのものを買うことは、政治的な不確定要素を多く含む。そこで考えられるのが、以前紹介した保険株買いによるヘッジである。

現状で買いの対象となるのは、米国でビジネスを展開する保険会社である。上記の記事で書いたように、保険株は個人消費の伸びと金利の上昇を好感するため、原油価格の反発がインフレ率の上昇を招き、中央銀行の金融引き締めを早めた場合、米国の好景気による利上げをもっとも好感するのは保険株である。

より良いことに、Target (NYSE:TGT、Google Finance)、Whole Foods (NASDAQ:WFM、Google Finance)など米国の小売業がP/E 30前後で取引され、米国株の多くが割高で推移するなか、保険株はいまだP/E 10前後で取引されている、米国市場では数少ない割安業種の1つである。

当面は低金利が続くと思われるため、単独での買いは推奨できないが、米国や英国の航空株や、欧州や日本の不動産株など、原油安が価格を支えている資産にポジションが傾きすぎていると感じる投資家には、検討する価値があるのではないか。