世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、自身のブログで11月のアメリカ大統領選挙について語っている。
ハリス氏の追い上げ
アメリカ大統領選挙では一時、前大統領のドナルド・トランプ氏が圧倒的な優位に立ったと思われていた。暗殺事件の時のトランプ氏の立ち回りがあまりに見事で、その後にトランプ氏の支持率が大幅に上がったからである。
だがその後、ジョー・バイデン大統領ではトランプ氏に勝てないと判断した与党民主党は、バイデン氏を撤退させ副大統領のカマラ・ハリス氏を新たな候補とした。
そしてハリス氏は世論調査では少なくともバイデン氏よりも上手くやっているようである。
筆者はこの状況を早期から予想してきた。上記の記事ではその理由について次のように書いている。
何故ならば、民主党支持者は元から候補者など気にしていないからである。候補者を気にしながらバイデン氏を支持していたとすればそれは完全に異常だろう。誰でも良かったからバイデン氏がここまで候補としてやって来られたのである。
民主党支持者はほとんど認知症であることが最初から分かっていたはずのバイデン氏でも良かったのだから、ハリス氏ではいけない理由が何かあるだろうか。
ハリス氏の人気は続くか
ハリス氏はこのままトランプ氏を追い上げることが出来るのか。ダリオ氏は現在のハリス氏の人気について興味深いことを書いている。
ダリオ氏は次のように述べている。
民主党の党大会はあらゆる意味で団結し影響力ある政党の姿を支持者に示したが、そういう印象を与えられたのは普通なら予備選で表れるような党内での争いがなかったからだ。予備選では候補者が自分の信念や行動について互いに討論し、国民が候補者を理解するきっかけになる。
今回、ハリス氏は民主党支持者の投票なしに選ばれた。バイデン氏が後継者としてハリス氏を指名し、党大会でそのままそれが承認されたからである。
アメリカの政治について知っている者からすれば、このプロセスはあまりに民主党らしい。民主主義を掲げる民主党では、有権者が関わっていないところで候補者が決まるのである。
2016年の大統領選挙で民主党がトランプ前大統領に負けた理由も、有権者に人気だったバーニー・サンダース氏を差し置き、党内政治の結果ヒラリー・クリントン氏を候補としたからだと以下の記事で分析している。
ダリオ氏は以前からハリス氏が極端な左派なのか、穏健な左派なのかということを気にしていた。
だがハリス氏は結局党内での討論などを一切行なっていないために、彼女個人の政治的な考えが明らかになる機会はまだないままとなっている。
ダリオ氏は次のように続けている。
結果として、ハリス氏と(副大統領候補の)ウォルズ氏の民主党がどれぐらい左派なのかという問題は答えられないまま不明瞭となっている。
結論
そしてハリス氏の政策がまだ明らかになっていないということが、ハリス氏の人気に繋がっているとダリオ氏は指摘しているのである。
ダリオ氏は次のように指摘している。
だがその都合の良い状況は政策の詳細が明らかになれば崩れることになる。政策が具体的になれば、党内は政策をめぐって分裂し、その政策の詳細に賛成できない多くの有権者を遠ざけることになる。
政策の詳細が明らかになっていない間はトランプ氏に投票したくないすべての有権者はハリス氏のもとに団結することができる。
だが富裕層向け増税やインフレをもたらしかねない脱炭素政策(あるいは脱炭素支持者にとってはインフレを恐れて脱炭素できないこと)などの詳細が明らかになれば、現在ハリス氏を支持している人もハリス氏への投票をためらう可能性が出てくる。
一方で、トランプ氏の政策は比較的はっきりしている。減税・低金利・親化石燃料である。
ハリス氏にとっては政策を喋る機会が試練となるだろう。9月10日にはトランプ氏との初討論も控えている。
トランプ氏の政策については以下の記事における分析がより詳しいので、そちらも参考にしてもらいたい。