今日は久々にドル円相場について話そう。11月のアメリカ大統領選挙も近づいているので、良い頃合いだろう。
ドル円の下落相場
コロナ以降、世界的な物価上昇を背景に、アメリカの金利上昇と日本の量的緩和が原因となってドル円は急上昇をしていたが、今年の7月以降アメリカが利下げを本格的に考え始め、日本でも日銀が利上げをしたことからトレンドが逆転、ドル円は急落している。
だがこのトレンドは8月以降停滞している。ドル円は160円台から145円近辺まで急降下した後、1ヶ月ほど横ばいとなっている。
ドル円下落と下落停止の原因
ドル円の下落は何故止まっているのか。ドル円はもう下がらないのか?
そもそもドル円が下落した理由は、上に書いた通りアメリカの利下げ観測と日本の利上げである。
アメリカではFed(連邦準備制度)のパウエル議長が先月のジャクソンホール会議で利下げ開始を宣言した。
日本では植田総裁が利上げを既に開始しており、今後も継続の姿勢を示している。
アメリカで金利が下がり、日本で金利が上がっていることがドル円の下落に繋がっている。
アメリカの利下げ
金融市場でもアメリカの利下げが織り込まれており、金利先物市場では来年末までに2.25%と比較的大幅な利下げが織り込まれている。
それはまさにこれまでドル円が下がってきた理由である。しかしそれこそが、ドル円の下落が止まっている理由でもある。
経済学者のラリー・サマーズ氏が次のように言っていたことを思い出したい。
為替相場や先渡取引はドルの価値下落を既にかなり織り込んでいる。
ドルを空売りするなら、それは今の織り込みよりも更にドルが下落すると考える場合だろう。だが更なる織り込みの余地がそれほど残されているかどうかは微妙だ。
サマーズ氏の言う通り、ドル円が更に下落するためには利下げの織り込みが今よりも増すことが求められる。つまり、現在織り込まれている2.25%以上の利下げを金融市場が織り込むようにならなければならない。
だが利下げの織り込み幅は既にかなり大きく、それ以上の利下げが必要になるのかどうかはまだ明らかではない。
だから今後の利下げ動向を織り込んで推移する2年物国債の金利は、8月以降それ以上下がっていない。それがドル円と連動しているのである。
ドル円の推移予想
ドル円の今後の推移はどうなるか。
これまでの予想通り、雇用統計やCPI(消費者物価指数)はこれからも緩やかな減速を続けるだろう。それが11月までにドル円を145円よりも下に押し下げる可能性はある。
しかし経済指標の弱いトレンドをあと2ヶ月乗り切れば、11月には遂にアメリカ大統領選挙がある。特にトランプ前大統領が勝利すれば、金利のトレンドは反転するだろう。
トランプ氏がインフレを再発するほどの景気刺激をやってしまうのでなければ、トランプ氏の景気対策でアメリカ経済の好景気は数年延長され、金利は上昇方向に急転換し、まさに2016年のトランプ相場のようにドル円は上げ相場へと転換してゆくことになる。
少なくともどちらの候補でも財政赤字が増えることはほぼ確定であり、金利については投資家は金利上昇に賭け始めるべきタイミングである。ここから11月に向けて米国債の売りを仕込んでおけば、その後の金利上昇に乗れるはずだと考えている。