引き続き、アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏のBridgewaterによるインタビューである。今回はドル円やユーロドルの為替レートについて語っている箇所を紹介したい。
ドルの下落は始まったばかりか
サマーズ氏はマクロ経済学者であってファンドマネジャーではないが、今回のインタビューでは相場についてかなり踏み込んで話している。
例えば前の記事ではゴールドをポートフォリオに入れることの是非について語っていた。
そして今回はドル相場に関する部分である。アメリカでインフレ率が下落し、Fed(連邦準備制度)のパウエル議長が利下げ開始を予告する中、ドルは円やユーロに対して下落している。
ドル円のチャートは次のようになっている。
サマーズ氏とドル相場
サマーズ氏は現在のドル下落についてどう考えているのか。サマーズ氏は次のように述べている。
アメリカの実質金利とヨーロッパや日本の実質金利、そして先渡取引における10年後のドルの実質為替レートの水準を考えればどうか。
ドルの実質金利は他の国よりも高い。
アメリカではFedの利下げ開始を織り込んで金利が下がっている。だがサマーズ氏が指摘しているのは、それでもアメリカの金利は日本やヨーロッパよりも高いということである。
日本では日銀の植田総裁が利上げをしようとしているが、日本経済はアメリカ経済よりもかなり弱く、利上げをどれだけ続けられるかは不透明である。
もしこの状況が続くのであれば、結局日本は思ったほど利上げが出来ず、利下げしようとしているヨーロッパではアメリカよりも大きな利下げをしなければならなくなり、円やユーロは結局ドルよりも弱くなってゆく可能性もある。サマーズ氏はそれを指摘しているのである。
ドルの為替レートの水準
もう1つの問題は、最近のドル下落が利下げをどれだけ織り込んだものなのかということである。
サマーズ氏は次のように言っている。
為替相場や先渡取引はドルの価値下落を既にかなり織り込んでいる。
ドルを空売りするなら、それは今の織り込みよりも更にドルが下落すると考える場合だろう。だが更なる織り込みの余地がそれほど残されているかどうかは微妙だ。
金融市場はアメリカの利下げをどれだけ織り込んでいるのか。金利先物市場によれば、市場は年末までに1%、来年末までに2.25%の利下げを織り込んでいる。
そしてサマーズ氏はこの織り込みを金利の下げ過ぎだと主張していた。
それは特に11月の大統領選挙でトランプ前大統領が当選した場合にそうだと言えると筆者も考えている。トランプ氏の主張する景気刺激と2.25%の利下げが組み合わさった場合、アメリカ経済はインフレ再加速となってしまう可能性が高い。
結論
それはドル相場にどういう意味を持つのか。ドル相場がここから更に下がるのは、Fedがこれから利下げをする場合ではなく、今織り込まれている利下げ幅以上に市場が利下げを織り込む場合である。
つまり、ドルがこれ以上下がるとすれば、市場が来年末までに2.25%ではなく、それ以上の2.5%や3%の利下げを織り込んでゆく場合だということになる。
前にも書いたが、この状況は2016年トランプ相場に似ている。2016年には景気減速が懸念されドルが下がっていたが、11月のトランプ氏の当選と同時に市場はアメリカ経済に強気転換し、ドルの上げ相場へと変わっていった。
同じような状況になる可能性はある。ドル円についてより詳しくは以下の記事を参考にしてもらいたい。