AI銘柄筆頭のNVIDIAは割高なのか? 最新決算を解説する

米国時間8月28日、NVIDIAの決算が発表された。今やS&P 500を牽引している米国株の時価総額2位なので、金融市場全体から注目された決算である。

売上高、純利益、ともに市場予想上回る

AIや暗号通貨の複雑な演算に使われるGPUを製造しているNVIDIAはAI銘柄の筆頭として多くの投資家に注目されている。また、今やS&P 500の大きな部分を占めているので、米国市場全体に及ぼす影響も大きい。

そのNVIDIAはChatGPT発表以降のAI需要の高まりによって驚異の高成長を遂げてきた。AIの演算にはNVIDIAの製造するGPUが必要だからである。

だからNVIDIAの決算が市場の高い期待を超えられるのかが注目されていた。最新決算はどうだったのか。

まず数字を載せよう。7月28日までの四半期の決算で、売上高は300億ドル、純利益は166億ドル(1株当たり純利益0.67ドル)となった。市場予想は売上高257億ドル、1株当たり純利益0.64ドルだったので、両方とも上回った計算になる。

NVIDIAの株価水準

最新四半期(3ヶ月)の業績は上の通りだが、直近の1年間の1株当たり純利益は足し合わせると2.13ドルになる。NVIDIAの株価は125.61ドルなので、確定済みの業績を用いた株価収益率は59倍となる。

このように、NVIDIAの株価収益率は高い。つまり、それだけ見れば割高ということになる。だがNVIDIAの株価収益率はずっと高かったが、それでも株価は長らく大幅に上がり続けてきた。

それは急激な1株当たり純利益の上昇によって株価収益率が急激に低下すると予想され続けているからである。株価収益率の定義は以下の通りである。

  • 株価収益率 = 株価 / 1株当たり純利益

だから1株当たり純利益が急上昇している高成長株の場合、将来の株価収益率の低下が見込まれるので、高い株価収益率が正当化されるのである。

純利益の高成長

では純利益はどれくらい成長しているのか。前四半期から見た純利益の成長率を年率(その成長が1年続けばどうなるか)に直したものは以下のようになっている。

  • 2023年8-10月: +398%
  • 2023年11月-2024年1月: +212%
  • 2024年2-4月: +115%
  • 2024年5-7月: +55%

ChatGPTが話題になった2023年は物凄い成長率だったが、それはAIがなかった時代のNVIDIAの純利益がAIがある時代のNVIDIAの純利益に変わってゆく過程だったと言えるだろう。

その純利益の成長率は徐々に落ち着いてきている。それは恐らくはAIのある時代のNVIDIAの普通の成長率に近づいてきているということなのだろう。

ではNVIDIAの成長率は最終的に何処に落ち着くのか。アナリスト予想平均によると、NVIDIAの1株当たり純利益は2025年1月までの1年間で2.75ドル、2026年1月までの1年で3.81ドルになると予想されている。

この数字を使って計算すると、NVIDIAの株価収益率は2025年1月に46倍、2026年に33倍になると予想されている。

また、この2つの数字を使うと、NVIDIAの純利益はその1年で39%増加すると予想されていることになる。現在の増加率が55%だから、妥当な予想だろう。

NVIDIAは割安か?

この株価水準をどう考えるか。筆者は妥当だと考えている。筆者は2023年からNVIDIAを割安だと主張してきたが、業績と比べて一番割安だったのは以下の記事のタイミングだろう。筆者は今年1月に次のように書いていた。(株式分割により株価と1株当たり純利益は今の10倍で表記されている。)

最新のデータでは、NVIDIAの1株当たり純利益は来年には20.44ドルになるというのがアナリスト予想の平均である。現在のNVIDIAの株価は522.53ドルなので、これを元に計算した株価収益率は25.6倍となり、AI需要によって高成長しているNVIDIAの株価水準が利益増加によって来年にはほとんどS&P 500の平均になるという計算になる。

もう何度も説明しているが、このバリュエーションはおかしいのである。

このタイミングでは、NVIDIAの翌年の株価収益率は26倍と予想されていた。これは半年以上前の話であり、NVIDIAの利益成長は今よりももっと高かった。

だが今の株価水準がどうかと言えば、翌年ではなく翌々年の株価収益率で33倍である。しかも利益成長率は以前より下がっている。

結論

ということで、当時の超割安だったNVIDIAを買っていた筆者やドラッケンミラー氏から見ると、今のNVIDIAの株価水準は妥当か多少割安といったところであり、短期トレードとして積極的に買い増してゆくタイミングではない。あと25%下がってくれたら買いを考えられるかもしれないが。

だが、長期的な見通しとしてはNVIDIAは良い銘柄だと思う。それは以下の記事に書いた時から変わっていない。AI需要はまだ始まったばかりである。

だが今やNVIDIAより大幅に割安なAI銘柄があり、筆者やドラッケンミラー氏の注目はそちらにシフトしている。株式市場の主力銘柄は変わりゆくものなのである。