引き続き、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。今回はレイ・ダリオ氏が創業した世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterのポートフォリオを解説する。
ダリオ氏の米国株ポジション
これまでの記事ではジョージ・ソロス氏とその弟子のスタンレー・ドラッケンミラー氏のポートフォリオを紹介した。
今回のForm 13Fは6月末のポジションを開示するものであり、それは7月から8月にかけての株安の直前ということになるが、ソロス氏もドラッケンミラー氏も米国株を売却していたことが明らかになった。
レイ・ダリオ氏はどうかと言えば、Form 13Fに報告されているポジション総額は192億ドルと、前回3月末の198億ドルからほとんど変わっていない。
Bridgewaterは多い時には250億ドル近辺までポジションを増やし、少ない時には100億ドル以下までポジションを減らすので、今の水準は多いとも少ないとも言えない数字である。
ダリオ氏の個別株選択
一方で個別株には面白い変化が見られる。ダリオ氏は少し前までP&GやJohnson & Johnsonなどの消費財株を多く保有していたが、現在の個別株ポジション(ETF除く)を金額順に並べると上位は次のようになる。
- Alphabet: 8.3億ドル
- NVIDIA: 8.1億ドル
- P&G: 5.9億ドル
- Amazon.com: 5.1億ドル
- Microsoft: 4.9億ドル
消費財株が減らされ、ハイテク株の割合が増えている。この中で今回大きくポジションが増えているのはNVIDIA、Amazon.com、Microsoftであり、それぞれ9.3倍、2.5倍、1.9倍に株数が増加している。
中でも大きく増えているのはNVIDIAであり、AIや暗号通貨の演算に使われるGPUを製造しているメーカーである。
MicrosoftもChatGPTを作っているOpenAIに投資しているほか、AI関連のサービスも行なっており、この布陣は明らかにAI需要に賭けることを狙ったものと思われる。
筆者が去年から言っていた、NVIDIAは高い株価収益率にもかかわらず割安だという主張が、ダリオ氏にもようやく分かったのだろうか。
NVIDIAの株価チャートは次のように推移している。
Microsoftは次のように推移している。NVIDIAよりは不調だが、本業がAIとは関連していない差が出たのだろうか。
結論
ダリオ氏がとうとうAIに興味を持ったようである。NVIDIAの長期見通しについては以下の記事で説明している。
長期見通しに関してはここで書いた内容と今でも変わっていないが、NVIDIAに関して言えば株価上昇により短期的な割安さは既になくなってしまった。8月始めの下落時においても、去年ほど割安なわけではなかった。
筆者もドラッケンミラー氏も、NVIDIAの短期的な株価動向に興味を持っていたのは去年の話であり、NVIDIAが破格の割安水準とは言えなくなった今、次のAI銘柄に目線を移している。
CoherentやLumentumは現在、去年のNVIDIAと同じか、それ以上に割安な水準にある。ダリオ氏の選択は長期投資としては間違いではないのだろうが、NVIDIAに興味を持つのが少し遅くはなかっただろうか。