ガンドラック氏: アメリカ民主党の奨学金ローンや医療ローンの帳消しが愚かである理由

11月のアメリカ大統領選挙が近づく中、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がTwitterでカマラ・ハリス副大統領の経済政策を痛烈に批判している。

医療債務の免除

バイデン大統領が出馬を撤回したため、大統領選挙はトランプ氏とハリス氏という構図になったが、ここに来てガンドラック氏がtwitterに連続投稿し、ハリス氏の経済政策を批判している。ガンドラック氏は共和党員だったのかと思わせるほどの勢いである。

まず最初はハリス氏の提案している医療債務の免除である。アメリカでは日本のような国民皆保険制度がないため、医療費が非常に高額である。

だから医療費を払うために借金をしている人もいる。

そこでハリス氏は医療債務の免除を提案している。アメリカ民主党は奨学金ローンの帳消しをやったように、こういう政策が大好きである。

債務を帳消しにすることの問題点

だが特定の債務の帳消し政策には問題点がある。債務によって得た資金は他の用途にも使えるということである。

例えば後で返さなければならない奨学金を背負った学生は、生活を切り詰めるかもしれない。だが奨学金を返さなくて良いと分かった途端、学生は本来切り詰めていたはずのお金を娯楽や投資などに使うだろう。

このように、奨学金の免除は他の支出を増大させる。むしろ奨学金や今回の場合医療債務は、返さなくて良い借金として人気になるだろう。

だからガンドラック氏は次のように述べている。

医療債務の免除を提案などすれば、債務者が自分の負債を医療債務に置き換えようとするので、全体の負債における医療債務の割合が増加する。それは国民の医療費を増加させることになる。

医療債務とクレジットカードの債務残高がある場合、誰も医療債務の方を返済しようとは思わなくなるだろう。その分クレジットカードで多く借金できるようになるのである。

債務免除で金利上昇

しかも問題はそれだけではない。国全体で医療債務が増えればどうなるか。お金を貸す側が増えていないのに借りる側が増えたとすれば、貸す側をより多く惹きつけるために債券市場では医療ローンの金利が上がるだろう。

つまり、免除された人間は良いかもしれないが、免除を受けていない多くのアメリカの患者にとって医療費が上がってしまうのである。

これは補助金政策の本質である。補助金政策とは誰かを助けることではなく、別の誰かからお金を奪い取って特定の人々に与えることである。

経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が『貨幣発行自由化論』で次のように言っていたことを思い出したい。

自分で得たわけでも他人が放棄したわけでもないものを得る権利を特定の人々に与えることは、本当に窃盗と同じような犯罪である。

一般的な理解が不足しているために、紙幣発行の独占者による過剰発行という犯罪はいまだ許容されているだけではなく称賛さえされている。

政治家は今日も窃盗を行なっている。しかもそれを支持する人々は多い。政治とはそういうものである。


貨幣発行自由化論