前回の記事で、AI銘柄のNVIDIAの株価暴騰を見事に予想したスタンレー・ドラッケンミラー氏が別のAI銘柄であるCoherentという銘柄に乗り換えたことを報じた。
今回の記事ではCoherentがそもそもどういう会社なのか、どれくらい割安なのかを解説したい。
米国株AI銘柄
ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで知られるドラッケンミラー氏は2年前、AIの複雑な計算に使われているGPUを製造しているNVIDIAの株価上昇を予想していた。
そしてNVIDIAの株価は爆発的なAI需要の結果、ドラッケンミラー氏の推奨時から暴騰した。
だからドラッケンミラー氏はNVIDIAのポジションを縮小し、次のAI銘柄に目をつけている。
それが今回紹介するCoherentなのである。
Coherent
AI銘柄は何もGPUメーカーだけではない。AIという新たなものが誕生することで何処に爆発的な需要が生じるかを考えなければならないのである。
Coherentは1971年に創業された光学機器メーカーで、様々な買収を繰り返して今の大きさになった。元々は別の名前だったが、2022年に買収したレーザー機器メーカーの名前を取って今の名前となっている。
Coherentの製品は大きく3つに分けられる。産業用レーザーと、レアメタルなどの非鉄金属と、光トランシーバーなどのネットワーク機器である。
そしてCoherentの製品の中でAI需要により注目されているのが、光ファイバーの光信号をデータに変換する光トランシーバーである。
光トランシーバー
AIとCoherentのかかわりについては公式サイトに説明がある。公式サイトでは次のように書かれている。
OpenAIのChatGPTやGoogleのBart、MicrosoftのBingなどのAIについては聞いたことがあるでしょう。
でもそれが何故光トランシーバーと関係があるのかと思うことでしょう。
光トランシーバーは光ファイバーの中を通る光信号をデータに変換するために必要となる電子機器である。それがAI需要の中でどのように使われているのか。
公式サイトは次のように説明する。
AIは何十億ものパラメーターをもつ何らかのデータの集合体を学習しなければなりません。そのためには膨大な計算力が必要となり、作業は何万ものプロセッサーに分散されることになります。
こうした新たな必要性に対処するため、世のなかのデータセンターではAIや機械学習専用のサーバーやネットワークを再構築しています。
AIの行なう計算は1つのGPUで行われるわけではない。それは数多くのGPUに分散される。
そうなれば当然、サーバ間で互いに通信し合うことが必要になる。そうなるとサーバ間通信の速度が当然重要になり、その鍵を握るのが光トランシーバーなのである。
公式サイトは光トランシーバーの通信速度について次のように述べている。
光トランシーバーの速度はネットワークの性能にとって非常に重要です。AIや機械学習に対応するためのネットワークの再構築が、弊社や同業他社が光トランシーバーの高速化をこれまでにない速度で進める動機となっています。
たった20年前まで、光トランシーバーの最速の転送速度は10Gでした。今では弊社のデータ向け光トランシーバーの売上の半分以上が200G以上の光トランシーバーによって生まれています。
AIや機械学習の需要増加によって、800Gの光トランシーバーが既に商品化されており、数年以内に1.6Tのデータ向け光トランシーバーを販売できる予定です。
AIの膨大なデータ処理に対応できる光トランシーバーを作っているのが、業界最大手のCoherentなのである。ちなみに光トランシーバーのシェア2位がLumentum(米国株)、3位がInnoLight(中国株)となっている。
株価の水準
Coherentの株価水準はどうだろうか。Coherentの売上高上昇は実はまだほとんど起きていない。AI向けのデータセンターの必要性が議論され始めたのがほんの最近だからである。今週発表されたばかりの最新の決算では、直近の四半期の前年同期比の売上高成長率は9.1%となっている。
だがCoherentの成長はここからである。アナリスト予想の平均によれば、1株当たり純利益は2025年6月期で3.05ドル、2026年6月期で4.27ドルになると予想されている。2025年から2026年で40%の利益成長ということになる。
現在のCoherentの株価は76.63ドル(昨日の記事から1日で既にかなり上がってしまった)なので、株価収益率は2025年6月期で25倍、2026年6月期で18倍となる計算である。
ちなみにNVIDIAは2025年1月期に45倍、2026年1月期に33倍なので、それよりもかなり割安な計算になる。
結論
18倍という株価収益率はS&P 500の平均よりもかなり安い。株価収益率は高成長企業ほど高くなるべきなので、2026年にCoherentがAI需要を受けて高い売上高成長率を維持しているならば、その株価収益率は有り得ないということになり、株価は上がらざるを得ない。
これはNVIDIAの株価が暴騰する前に筆者が説明した理屈である。
NVIDIAからCoherentに鞍替えしたドラッケンミラー氏の判断は正しいと筆者も考えている。NVIDIAが悪いわけではないが、Coherentの状況はNVIDIAよりも更に良い。
ドラッケンミラー氏は今利益の出ている株ではなく、これから利益が出る銘柄を買えと言っていた。彼は自分の言葉を有言実行しているのだろう。