引き続き、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。今回はジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィス、Duquesne Family Officeのポートフォリオを紹介する。
ドラッケンミラー氏も米国株売却
前回の記事ではドラッケンミラー氏の師であるソロス氏のポートフォリオを紹介したが、ソロス氏は7月からの株価下落の前に米国株を売り払っていた。
では弟子であるドラッケンミラー氏はどうかと言えば、興味深いことにドラッケンミラー氏も米国株の多くを売却している。
今回は6月末のポジション開示だが、ドラッケンミラー氏がForm 13Fに報告している米国株のポジション総額は3月末の44億ドルから29億ドルに大きく減っている。
ドラッケンミラー氏の相場観
ドラッケンミラー氏は今何を考えているのか。コロナ後の現金給付でインフレが発生して以来、ドラッケンミラー氏の相場観は一貫している。インフレ相場ではインフレ時には株価は上昇し、インフレが収まった後で株価は下がるというものである。
だからドラッケンミラー氏は米国株が長期的に上がったり下がったりを繰り返すと予想している。
それが実際、1970年代の物価高騰時代に起こったことである。インフレ相場とはそういうものなのである。
ドラッケンミラー氏の個別株選択
そのドラッケンミラー氏が米国株を売っているということは、インフレが収まり株価が下がる時期が来たと判断しているということだろう。
だが、ドラッケンミラー氏は個別株は別だと考えていた。それで買っていたのがAI銘柄筆頭のNVIDIAである。
歴史を見れば、景気後退でも持続的に非常に良い決算を出せば、株価は問題ないということが分かる。
相場全体が悪い場合にも個別株は別だということである。ちなみにNVIDIAは爆発的な売上高成長を見せ、株価は6倍になった。
そして今やドラッケンミラー氏は別のAI銘柄を見ている。それは工業用レーザーや光ファイバー関連部品などを製造しているCoherentである。
Coherentはこれまでは普通の銘柄だったのだが、製造している製品のうち光ファイバーの光をデータに変換する光トランシーバーがAI用のデータセンターなどで使われており、アナリスト予想では来年から再来年にかけて利益の成長率が40%になると想定されている。
Coherentの株価は以下のように推移しており、来年のアナリスト予想に基づく株価収益率は23倍、再来年の利益予想に基づけば17倍とかなり安い。
ドラッケンミラー氏のポジションは2.6億ドルで、ポートフォリオ内最大ポジションとなっている。
Coherentについては別途詳しい記事を書くつもりだが、要注目銘柄として紹介しておく。
結論
ということで、ソロス氏とドラッケンミラー氏の両方が米国株全体に関してはリスクオフの姿勢となっている。
だがそれよりも重要なのはCoherentではないか。市場がNVIDIAに注目している間にファンドマネージャーたちは次の銘柄を探している。
ドラッケンミラー氏の銘柄の選び方については以下の記事を参考にしてもらいたい。