アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間7月31日にFOMC会合を行い、政策金利の維持を決定した。
政策金利の維持自体は既定路線なので、これからの金融政策についてどう議論されたかが問題となる。今回はドットプロットなどの追加情報は公開されない回なので、声明文とパウエル議長の記者会見の内容を検証してゆく。
減速するアメリカ経済
アメリカのインフレは落ち着いてきた。投資家が注目している雇用統計とCPI(消費者物価指数)の最新のデータは、両方ともアメリカ経済の減速を表している。
会合後に発表された声明文は、こうした景気減速を反映したものになっている。
例えば前回会合の声明文で労働者数の増加は「強いままだ」と書かれていた部分は今回の声明文では「落ち着いてきた」と修正され、インフレは「高い水準にある」と書かれていた部分は「いくらか高い水準にある」とされている。
パウエル議長自身も記者会見で次のように言っている。
労働市場は過熱がおさまり、インフレは下がってきている。雇用とインフレに関するわれわれの目標達成へのリスクは引き続き減少している。
第2四半期のインフレデータはわれわれの自信に繋がった。更なる良いデータが来れば、われわれの自信は更に高まるだろう。
今年のアメリカ利下げ
さて、投資家の注目は当然利下げがどうなるかである。アメリカはインフレ抑制のために長らく政策金利を5.25%に据え置きしているが、インフレ率が下がってくれば利下げも可能になる。
パウエル議長は利下げについて次のように言っている。
アメリカ経済は政策金利の切り下げがふさわしいと言える水準に近づいてきているというのがわれわれが広く共有する感覚だ。
問題は、データ全体と今後の展望、そしてリスクの状況がインフレ抑制へのわれわれの自信および労働市場の健全な強さと一貫性を持ち続けるかどうかだ。
そのテストがクリアされれば、政策金利の切り下げは早ければ9月には議題に上がるだろう。
パウエル氏は次回9月のFOMC会合における利下げを示唆している。
ちなみにこれはニュースではない。金利先物市場は既に9月の利下げを完全に織り込んでしまっているので、むしろ利下げを示唆しなければ市場にとってサプライズとなる。
結論
ということで、Fedは金融市場の期待通り9月の利下げに向けて動き始めている。
利下げに向かうアメリカと利上げに向かう日本という構図が、ドル円を急落させている。
問題は9月以降の利下げである。日銀の植田総裁が利上げ継続を示唆したように、アメリカでも金利先物市場は9月に引き続き11月、12月のFOMC会合でも利下げをすることが織り込まれている。
つまり、今年のアメリカの利下げは3回だということである。
今は金融市場はアメリカ経済の減速を織り込んでいるが、今年3回の利下げに加え、11月のアメリカ大統領選挙で当選した新大統領がばら撒き政策を行いそうであることを考えれば、アメリカ経済はむしろ過熱の方向に向かってゆくかもしれない。
下がって上がるというのが筆者の予想である。財政政策については以下の記事で詳しく分析してあるので、そちらも参考にしてもらいたい。