引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏のLinkedInにおけるブログ記事である。引き続きアメリカ大統領選挙の話題である。
アメリカ大統領選挙
前回の記事ではダリオ氏はトランプ前大統領の暗殺未遂事件に触れ、その後の共和党の動きについて語っていた。
だから今回は与党民主党の話である。暗殺未遂を生き延びたトランプ氏の支持率が上がったことで、高齢問題が顕在化していたバイデン大統領はますます窮地に追い込まれた。
それでバイデン氏は結局出馬を諦め、副大統領のカマラ・ハリス氏を代わりの大統領候補として支持した。
ハリス氏の勝算
ダリオ氏は次のように述べている。
民主党の政治家たちは素早くカマラ・ハリス氏の周りに集まったが、団結している共和党の政治家ほど団結できるかどうかはこれから次第である。
果たしてハリス氏はトランプ氏に勝つことができるのか。ダリオ氏は次のように続ける。
現状、トランプ氏と共和党のイデオロギーはかなりはっきりしている。彼らは強硬な右派だ。だが人々はカマラ・ハリス氏が議論しているところを見たことがないので、彼女がどんなイデオロギーを代表しているかは知られていない。
急に大統領候補となった副大統領のハリス氏のことを人々はあまり知らない。「黒人女性」ということが強調されているが、それは他にアピールポイントがあまりないからである。
だが知られていないということがハリス氏にとってマイナスかと言えば、筆者は逆だと考えている。
ダリオ氏も次のように述べている。
だがそれは大して重要ではないだろう。少なくとも人々は彼女が中道左派だということを知っている。誰が彼女を支持しているかを(そして彼女自身の発言も)考慮すれば、彼女は中道のかなり左派だと人々は考えるだろう。
民主党の候補になる資格
実際、民主党の候補として成功するためには個人の人格が目立たないことが重要である。
例えばバイデン氏が民主党の有力な候補であったのは、トランプ氏との討論で彼が実はボケているということが公になる前までである。
更に振り返ってほしいのだが、2016年にヒラリー・クリントン氏がトランプ氏に負けたのは、恐らく特に女性の有権者がクリントン氏の意地悪な姑のような人物像を嫌ったからだろう。クリントン氏でなければ、トランプ氏は負けていた可能性も高い。
だから民主党の候補は知られることがむしろマイナスになる。これは2021年の岸田文雄氏の選挙戦略と同じであり、その点でアメリカ民主党と日本の自民党の支持者は似ている。
結論
ということで、筆者はトランプ氏が優勢だとは考えているが、多くの人が思っているほど圧勝だとは考えていない。民主党の支持者は(まさに自民党の支持者のように)政治家にどんな問題が起こっても頭をすげ替えられればすぐに再び支持を取り戻すからである。
だからダリオ氏は次のように言っている。
いずれにしてもこの大統領選挙が明確な強硬な右派と曖昧な左派の闘いだという事実は変わらない。
次の大統領がトランプ氏になるかどうかによって金融市場(特に株式市場)の動きが大きく変わるので、投資家は番狂わせに気をつけなければならないのである。