アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで米国の利下げについて語っている。
アメリカの利下げ
コロナ以来のインフレが収まりつつあることから、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は利下げを考えている。
それで金融市場は利下げがいつなのかを考えている。次のFOMC会合は、米国時間で7月30日から31日まで開かれる。
サマーズ氏は来週のこの会合について次のように言っている。
現在の経済データに基づけば、わたしなら来週は利下げしない。
利下げの開始については非常に注意深くなる必要がある。Fedが利下げを始めれば、引き続きの利下げを市場が期待することは避けられないからだ。
利下げ開始のタイミング
Fedは今年の後半に利下げを開始するということを繰り返し表明してきた。
来週の会合でないとしても、そのタイミングは近付きつつある。サマーズ氏は次のように続けている。
ここ何ヶ月かの経済データが低インフレ・景気減速側のトレンドだったことは確かだ。だから今では金融市場は9月の利下げを予想している。
現在のデータを考えれば、それは十分にあり得るシナリオだ。あり得るし、それが妥当だろう。
金利先物市場の織り込むメインシナリオは、9月に利下げをした後、その次の11月と12月の会合でも利下げをすることである。
つまり、年内3回の利下げがメインシナリオとして織り込まれている。
アメリカ大統領選挙と利下げ
だがFedには1つ問題がある。アメリカ大統領選挙が11月に控えているということである。
もし今年3回の利下げをして、新大統領の政策がインフレ的なものであったとしたら、来年のアメリカ経済はどうなるだろうか?
だが11月のFOMC会合は11月7日で、大統領選挙は11月5日なので、9月にもし利下げしなければ、Fedは大統領選挙の結果を見てから利下げを開始するかどうかを決めることができる。
しかし今のメインシナリオで行けば、次の大統領が決まる前に利下げを開始することになる。
結論
Fedは市場の予想を裏切ることを嫌うので、大統領選挙の前に利下げは開始されそうである。そしてそのままトランプ氏に決まれば、筆者の予想する金融緩和・財政出動の組み合わせが実現する。
何度も言っているが、現在アメリカの景気減速を織り込んでいる金融市場は、次第に大統領選挙後のインフレ相場へと移行するだろう。
転換期は9月ぐらいだろうか。貴金属、ドル、米国債の動きに注意したい。