ジム・ロジャーズ氏: 株式市場の上げ相場の終わりが近い

ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを設立したことで有名なジム・ロジャーズ氏がGet Rich Educationのインタビューでコロナ以後の株式市場の上げ相場について語っている。

来なかったアメリカの景気後退

株式市場は長らく上がり続けている。2023年には金利が上がったことで多くの著名投資家が景気後退を予想していたが、それは少なくとも2023年には起こらず、株価も上昇を続けている。

筆者を含む多くの投資家が景気後退を懸念していた中で、2023年の景気後退はないと明言していた投資家がいる。それが実はロジャーズ氏である。

ロジャーズ氏は2023年、景気後退は来ないと言っていた。その理由は「誰もが景気後退を予想している時には景気後退は来ない」というものである。

実際、リーマンショックの時にも危機を予想する人々は少数派だった。本当の金融危機とはそういうものであり、人々が楽観している時に来るものなのである。だから、多くの人が景気後退を予想しているような状況では景気後退は来ない。それがロジャーズ氏の理屈だった。

今は誰が景気後退を予想しているか

理にかなっているようで無茶苦茶にも聞こえるロジャーズ氏の理屈は、実際には正しかった。2023年に景気後退は来ず、ロジャーズ氏はそれを予想した数少ない人物となった。

もう1人それを当てた人物がいて、それはSoros Fund Managementの現CEOであるドーン・フィッツパトリック氏で、いわばロジャーズ氏の後輩にあたる。

だが今の状況はどうか。ロジャーズ氏は次のように言っている。

こういうことは歴史上何度かあったが、ほとんどすべての市場が最高値を更新している。そうでないのは中国ぐらいだろう。

ロジャーズ氏は去年、誰もが悲観的な状況だから楽観的な予想をした。ということは、今ロジャーズ氏はどのように考えているのか。

彼は次のように続けている。

それは素晴らしいことだ。多くの人が上げ相場を楽しんでいる。だが長年生きたわたしの経験によれば、状況がこれほど良い時、誰もが楽しんでいる時は、上げ相場の終わりが近いということだ。

景気後退寸前のアメリカ経済

実際、アメリカ経済はどうなっているか。筆者がずっと注目しているのは失業率である。

アメリカの失業率はかなり上がってきている。そして雇用統計の記事でも書いたが、失業率が前年に比べて0.5%以上上がっている場合、アメリカ経済が景気後退を逃れられた例は戦後1回もない。

だが金融市場は株式市場が史上最高値付近だという事実だけを気にしている。明らかに経済が弱ってきているのに、それが無視されている。それこそがリーマンショック前夜にも繋がるような、経済危機前夜のいつもの状況である。

景気後退に対する新大統領の政策

アメリカ経済は弱っている。だが今年は11月に大統領選挙がある。新大統領が誰になるにしても、経済が弱っていれば新大統領にとってばら撒きをする絶好の口実となる。

だから金融市場は経済減速と新大統領の政策のあいだで揺れている。

だがこの流れが最終的にどうなるかについて、ロジャーズ氏ははっきりとした見解を持っている。経済が弱れば政治家がどうするかについて、ロジャーズ氏は次のように言っている。

ワシントンの人間が紙幣印刷をするということをわたしは知っている。

不況になったとき、アメリカがこんな問題を許容することはできない、と彼らは言うだろう。それは大英帝国がやったことだ。

アメリカでは金利上昇で国債に高額の利払いが発生しており、借金の問題はおおごとになりつつある。

レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で説明しているように、その債務の問題を紙幣印刷で解決して衰退していったのが大英帝国など過去の覇権国家である。

ロジャーズ氏はアメリカもそのようになると考えている。一方で、ドナルド・トランプ前大統領は債務と高金利の問題を認識している。彼はそうならないように注意しようとしているが、彼の言葉を聞いていると財政赤字の増加は避けられないようにも聞こえる。

果たしてどうなるだろうか。11月でトランプ氏に決まったとしても、2025年は金融市場に波乱の多い年になるだろう。


世界秩序の変化に対処するための原則