ジョー・バイデン大統領の出馬撤回が決まり、11月のアメリカ大統領選挙もいよいよ佳境となってきた。ドナルド・トランプ前大統領が優勢と言われているが、現状の金融市場の反応はどうなっているだろうか。
トランプ相場と原油価格
最近の相場はトランプ相場を織り込み始めていると言われているが、市場がトランプ氏の政策をどう考えているのかについて、1つ1つの市場を順に見てゆくことで明確にしてゆきたい。
例えば、今回のトランプ氏の公約の要(だと筆者が考えていること)は原油価格の押し下げである。
トランプ氏はこの記事で、高金利ではなく原油価格の下落によってインフレを押し下げると言っていた。
また、プーチン大統領に言うことを聞かせるためには原油価格の下落によって産油国ロシアを資金難に追い込む必要があるとも言っていた。
だからバイデン大統領の脱炭素政策を廃止してアメリカ国内の産油企業に原油を掘らせ生産を増やすことはトランプ氏の政策の要であると筆者は考えている。
だが原油価格はそれほど下落していない。チャートは以下のようになっている。
トランプ氏はプーチン大統領を操るために40ドルという原油価格を挙げていたが、そこからは程遠い水準である。
市場の期待インフレ率
また、インフレはどうだろうか。トランプ氏はインフレを押し下げることを公約にしているが、市場の期待インフレ率は次のように推移している。
ここ1ヶ月ほどむしろ上がっている。
筆者や一部の著名投資家は、(トランプ氏かどうかによらず)新大統領がばら撒きによってインフレを再発させる可能性を懸念している。
そして市場がどうかと言えば、少なくとも今のところはやはりトランプ氏がインフレを悪化させると考えているようである。
減税と規制緩和
また、トランプ氏と言えば親ビジネス的政策であり、前政権では法人税を35%から21%に減税したことで株価を上昇させた。
今回もトランプ氏は法人減税を公約にしているが、前回ほどの下げ幅は残されていない。15%も目標に過ぎないことを以下の記事で説明している。
だからトランプ氏は今回、減税よりも規制緩和を全面に押し出している。
減税の余地が残されていないための苦肉の策とも言えるが、市場の評価はどうだろうか。市場の反応が一番表れているのは、恐らく小型株指数のRusselll 2000だろう。
最近のRussell 2000の上昇はトランプ相場を織り込んでのことではないかと思う。小型株指数は長期的にはS&P 500よりも不遇となっていたから、その巻き返しの意味もあるのだろう。
そしてそれは市場が景気後退リスクの減少を織り込んでいるということでもある。
結論
これらの反応をどう見るか。まず筆者は原油についてはトランプ氏の主張を甘く見てはならないと考えている。何故ならば、それはインフレと対露政策の両方にとって政策の要となっているからである。
トランプ氏はどうにかして原油価格を下げるだろう。だから投資家は原油価格の下落に恩恵を受ける何らかのポジションを持つべきである。
一方で、インフレに関しては市場の方が正しいと考えている。トランプ氏の政策はインフレ上昇側に作用せざるを得ない。問題は、トランプ氏がインフレを許容可能な水準に留められるかどうかである。
小型株指数の上昇は、トランプ政権による財政赤字が国債市場をパンクさせ、長期金利を高騰させない限りにおいては正しいだろう。
国債市場の破綻については、ポール・チューダー・ジョーンズ氏が年内、レイ・ダリオ氏が5年以内と予想している。
個人的にはアメリカの原油生産増加と超長期金利の上昇に賭けるのが安全な策だと考えている。
そしてこれらの要素に加えて、投資家はそもそもトランプ氏が勝つのかどうかを精査しなければならない。
大統領選挙はどうなるだろうか。11月まであと4ヶ月を切っている。