引き続き、11月のアメリカ大統領選挙で再選を目指すドナルド・トランプ氏前大統領のBloombergによるインタビューである。
アメリカのインフレ
大統領選挙ではトランプ氏が優勢だが、どちらの候補が勝つとしても、筆者や何人かの著名投資家は選挙後のばら撒きによってインフレが悪化することを懸念している。
当の本人であるトランプ氏はどう思っているのか。トランプ氏は次のように述べている。
インフレは国を破壊する。インフレは興味深い現象だ。
あなたがたはインフレについてわたしよりもよく知っているだろうが、わたしもインフレについてたくさん勉強した。
昔のドイツや他の多くの国の歴史を見れば、インフレが最終的には国を破壊するということが分かる。
インフレと大統領選挙
トランプ氏はかなりインフレを気にしている。インフレについて勉強したと言うのだから、恐らく1970年代の物価高騰でインフレを止められなかった大統領がことごとく敗北している事実も知っているのだろう。
一方で、スタンレー・ドラッケンミラー氏の指摘では、金利を上げてインフレ退治し、実体経済を景気後退に陥れることはそれほど政治的に高コストではない。彼は次のように述べていた。
ボルカー氏(訳注:金利を上げた当時のFed議長)が正しいことをした結果、1982年に経済が酷い状態になった後、1984年にレーガン大統領は49の州で勝利した。
結局、インフレ政策は企業しか利さないので、しらふに戻った国民にとって支持する理由などないのである。
だから選挙で勝ちたければ問答無用でインフレを抑えれば良い。だが高金利にはもう1つ、50年前にはなかった問題が今ではあることをトランプ氏は知っているようだ。
トランプ氏は次のように述べている。
金利でインフレを打倒するのはある種の自殺行為だ。債券の利払いがあるからだ。国債の利払いがアメリカを生きたまま食らってしまう。
政府債務が莫大な金額になっていることである。金利上昇によってその国債に利払いが発生し、アメリカ政府は借金の利払いのために借金する状況に追い込まれている。
トランプ氏のインフレ対策
ではトランプ氏はどうするのか。彼は次のように述べている。
わたしはコストを下げようと思っている。インフレを打倒する手段は金利でなくても良い。コストを下げれば、金利を下げることができる。
わたしには金利を下げる代わりにエネルギーコストを下げる案がある。
エネルギー価格を大きく押し下げる。アメリカの地中には液体のゴールドが埋まっていると言われるが、それは真実だ。アメリカは「液体のゴールド」を誰よりも持っている。
トランプ氏は原油価格を押し下げ、コストダウンによってインフレを打倒しようとしている。
幸か不幸か、アメリカの産油企業はバイデン大統領の脱炭素政策によって生産能力を制限されている状況にある。
だから脱炭素政策を廃止することでアメリカは原油の生産を増やすことができる。そうすれば原油価格は下がるだろう。
トランプ氏は金利を上げて需要を落とす方法ではなく、原油価格を下げる方法でインフレに立ち向かおうとしている。
結論
だが実際どうなるだろうか。トランプ氏は利下げとインフレ打倒を両方やると言っているが、筆者は減税などトランプ氏の他の公約との組み合わせで、少なくとも長期や超長期の金利は上がると考えている。
しかしトランプ氏は脱炭素政策廃止に関しては本当に本気だと言える。原油価格を下げることがプーチン大統領との交渉の鍵にもなると言っているから、トランプ氏は何が何でも原油価格を下げようとするだろう。
だから投資家は何らかの形で原油価格下落に恩恵を受けるポジションを持つべきである。トランプ相場の形が少しずつ見え始めている。