パウエル議長、利下げの準備が出来ていることを示唆

アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)のジェローム・パウエル議長がワシントンの経済クラブでインフレと金融政策について語っている。

アメリカのインフレ減速

コロナ後に高騰したアメリカの物価も落ち着きを見せ始め、金融市場では利下げを織り込みつつあるが、パウエル議長自身は利下げについてどう考えているのか。

まず、パウエル氏はインフレの状況について次のように言っている。

インフレは今年の第1四半期には改善が見られなかったが、第2四半期にはいくらかの進展が見られた。

インフレ率は今年の初めには高止まりしていたが、最近数ヶ月は減速トレンドを見せている。

パウエル氏は次のように続けている。

3ヶ月連続の改善であり、それを平均すればかなり良いペースの減速だ。

今年の初めにインフレが高止まりしていた件については、ジェフリー・ガンドラック氏が以下の記事でインフレ統計の季節調整が誤っている可能性を指摘していた。

この記事でガンドラック氏はインフレ率がその後下がってくると予想していたが、今のところそのようになっている。

アメリカの利下げ

インフレ率が下がっているとすれば、次に市場が気にするのは利下げである。

現在、アメリカのインフレ率は3.0%である。Fedはもう利下げをするのか。あるいはインフレ率がもっと下がってくるまで待つのか。

金融政策についてパウエル氏は次のように語っている。

金利を変化させると金融状況が引き締まり、そして経済成長や労働市場、そして究極的にはインフレなどの経済状況に影響を与える。ただタイムラグがある。

だからインフレ率が2%に下がるまで長々と待っているとそれは待ち過ぎることになる。

金融政策が実体経済に効果を表すまでにはラグがある。だから2%に下がってくるまで待ってから利下げをすれば、インフレ率はそのまま下方向に突き抜けてしまうだろう。

これはまさにガンドラック氏が去年からずっと言い続けている理屈である。だがパウエル氏は就任当時、この理屈を理解していなかった。それでコロナ後に2%を超えて上がり始めたインフレ率を長期にわたって無視し、利上げが出遅れたことで9%ものインフレを引き起こした。

だがパウエル氏は今それを理解している。パウエル氏は学んでいる。パウエル氏はどうもガンドラック氏ら著名投資家の発言を追いかけているらしい。彼らの主張が時間差でパウエル氏のコメントに表れるからである。(興味深いことにそこにもラグがある。)

前任者のジャネット・イエレン前議長も終盤にはラリー・サマーズ氏の意見を受け入れ、本物の識者から学んでいる様子が見て取れた。

だがパウエル氏はより積極的に本物の投資家の意見を取り入れているように見える。それは良いことである。

今年の利下げ見通し

パウエル氏はこれまで、インフレ率がたしかに2%に向けて下がっているという確信が得られるまで待っていると言い続けていた。

だが今では次のように言っている。

われわれはインフレが持続的に2%目標に下がってきているという確信が欲しかった。

そのためにはインフレデータの改善が必要だったが、最近それがいくらか得られている。

アメリカは利下げの準備が出来ているようだ。金利先物市場では9月のFOMC会合での利下げがほぼ織り込まれている。年末までには何と3回の利下げがメインシナリオとなっている。

インフレが減速し、利下げが出来るようになった。それは朗報なのだろうか。マーク・スピッツナゲル氏がまったく正反対のことを言っていたことが思い出される。

失業率は危険水準まで上がっている。利下げは間に合うのだろうか。そしてアメリカ大統領選挙がどうなるかである。