大統領選挙討論で呂律が回らなかったバイデン大統領の発言まとめ

11月のアメリカ大統領選挙を控え、民主党のジョー・バイデン大統領と共和党のドナルド・トランプ元大統領のテレビ討論が行われた。

1時間半ほどにわたる長い討論だったのだが、この討論が終わった後、アメリカのSNSなどではちょっとした騒ぎになっている。

大統領選挙の討論会

普通、大統領選挙の討論会ではそれぞれの候補の政策や、どちらが議論で優位に立ったかが話題になるのだが、今回メディアがざわめいているのはバイデン氏の様子についてである。

はっきり言えば、バイデン氏は上手く喋れていなかった。そもそも声が老人特有のかすれ方をしていて聞き取りづらい上に(以前はそれほどではなかったと思うのだが)、意味を取りにくいことを何度も繰り返す場面が目立った。

両候補の政策については11月の大統領選挙に向けて逐次取り上げてゆくが、今回の記事ではバイデン氏の様子について伝えたい。本来味方であるはずの民主党の人々でさえざわついているからである。

医療制度を打ち倒した?

まず最初にバイデン氏がおかしくなったのは税制について語っていた時である。

バイデン氏はトランプ氏の減税が富裕層の利益になったと批判した上で、税金がどういうことに使われるべきか語っていたのだが、その途中でバイデン氏は言うべき言葉を忘れたかのように見えた。

バイデン氏は次のように言っていた。

重要なのは子供や高齢者へのケアだ。医療制度の強化を続けなければならない。実現しなければならないのは、アメリカのすべての個人が、あの、コロナの…いや、失礼…

ここでバイデン氏は固まってしまった。その後も「しなければならいのは…」「対処しなければならないのは…」などと言い続けた後、ようやくバイデン氏は次のように言った。

われわれはようやく医療制度を打ち倒すことができた。

一体何を言っているのか? 誤字でも誤訳でもない。バイデン氏は確かにそう言った。そこでバイデン氏の発言は時間切れとなり、トランプ氏は聞き取りづらそうに顔をしかめていたが、発言権が戻ってくると次のように返した。

まあ彼は正しい。バイデン氏は医療制度を打ち倒すことができた。

国境警備隊がバイデン氏を支持?

次は移民問題について議論していた時である。

アメリカではメキシコなど南部の国境からの違法な移民が問題となっている。筆者もカリフォルニア南部を車で移動している時に何度も検問に遭ったことがある。検問はメキシコから麻薬を運ぶ不法移民を探しているのである。

こうした不法移民に断固たる対応を取っていたのはトランプ氏で、彼が移民を排除するために国境にフェンスを作ったことはよく知られる。

また、国境を取り締まる国境警備隊はトランプ氏の支持基盤としてよく知られている。だがバイデン大統領は議論の途中で次のように言った。

国境警備隊はわたしを支持してくれた。

テレビを見ていた人は驚いたはずだ。大統領選挙に興味のあるアメリカ国民で、国境警備隊が誰を支持しているか知らない人はほとんどいないはずである。

この時点で既にバイデン氏の様子がおかしいことに気付いていたトランプ氏はもはやあまり追求する素振りも見せずに次のように簡単に対応している。

国境警備隊が支持してくれたのはわたしだが、まあそれは良い。だが国境警備隊はわたしを支持してくれた。(国境警備隊のトップの)ブランドン氏に聞いてくれれば分かる。

トランプ氏は簡単にスルーしたが、これに対して討論会が終わった後に反応したのが国境警備隊の公式Twitterアカウントである。彼らは次のように投稿している。

国境警備隊はバイデン氏を支持したこともなければ、これからも支持することはないということを明確にしておきます。

イラクのせいで死んだ息子

最後に、極めつけはこれである。バイデン氏は大統領になろうと思った経緯について、次のように発言した。

わたしが最初に出馬しようと思った理由は、わたしの息子がイラクで…イラクのせいで死んだからだ。

これもバイデン氏の支持者が一番首をかしげたのではないか。バイデン氏には息子が2人おり、1人はウクライナの天然ガス会社で取締役を務めたり、薬物依存を隠して銃を所持したことで有罪判決を受けたりしている有名なハンター・バイデン氏である。以下の記事で少し触れている。

だが彼は生きている。亡くなっているのはもう1人の息子ボー・バイデン氏で、2015年に亡くなった彼はバイデン氏が大統領になった理由としてよく知られているのだが、彼の死因は脳腫瘍である。

何故彼がイラクのせいで死んだことになっているのか? ちなみにトランプ氏はもはやそのことに触れてさえいない。

結論

はっきり言って意味が分からない。バイデン氏は医療制度を打ち倒し、トランプ氏を支持した国境警備隊から支持を受け、脳腫瘍で亡くなった彼の息子はイラクのせいで死んだ。

そのまま書いたがほとんど怪文書である。この討論会は民主党寄りであることで知られるCNNが主催したが、CNNはこの討論会を見て67%の人がトランプ氏が勝利したと回答したと発表した。

一番驚いたのが、普通ならばバイデン氏を擁護する民主党の政治家たちがお通夜状態であることである。ハリス副大統領は、討論会よりもバイデン氏の実績を見て判断するように呼びかけた。討論会は擁護できなかったようである。

政策に関してはこれまでの記事の方が分かりやすいだろう。そちらを参考にしてもらいたい。